皆さんこんにちは。河上 純二 a.k.a JJです。
世界を変えるスタートアップ企業にフォーカスしたレポート第2回目は、音声等の物理的な特徴量から気分の状態を独自のアルゴリズムで判定するプログラムを提供しているスタートアップの「Empath」の下地貴明(しもじ たかあき)さんにお話をおうかがいしました。場所は前回に引き続きEDGEofさんにて。


Empathの特徴と活用分野

Empathは、声から感情の成分を解析し、それを可視化することができます。
見ていただくとわかるのですが4つ感情があって、黄色が喜び、緑色落ち着き、赤は怒りで、青は悲しみやとまどい、このマイクに話かけることで、リアルタイムに解析できます。

活用シーンとしてはコールセンターのオペレーターさんの教育トレーニングに活用されています。たとえば、そのオペレーターさんが上手に対応できない場合、スクリプトに自信がないのか、それとも応対そのものに自信がないのか?など課題抽出と解決のトレーニングに活用しています。
その他の業界でいえば、メンタルヘルスだったり、車のドライバーの感情理解だったり、VRヘッドセットに組み込んだり、フィットネスのアプリに提供しています。
Empathは、音声を発した人の状態を正確に把握して、適切な応対を必要とするシーンに非情に適しています。


東日本大震災がきっかけで始めたEmpath、世界50カ国で使われている

最初は仮設住宅をサポートしているスタッフのメンタルヘルスケアに活用しました。
東北の人とお話しているなかで大丈夫ですか?と聞くと「大丈夫、大丈夫」と答えていただく事があり、実際は本当に大丈夫なのか?というメンタル状態を明らかにするために、2013年3月から1年間、NTTドコモの復興申請支援室と共に 東日本大震災の支援事業として、Empathを活用したアプリを配布しました。30人に1年間アプリを利用してもらい、実際にメンタルのサポートを行ってきました。
このEmpathのプロトタイプアプリを作るにあたり、感情解析アルゴリズムを構築する必要がありました。そのためにまずは、約4万人分の音声データを集めました。評価者がすべての音声データを聞いて、一定のルールに従って評価ラベルを付ける作業をしました。過半数以上が喜びと評価した音声を喜びの教師データ群として、その音声の特徴(抑揚、音の高さ、大きさ等)を抽出、時間軸の変化も合わせて解析し、機械学習により予測モデルを構築しました。

現在はAPIを公開しており、1,100社デベロッパー、50カ国のお客様に使って頂いております。今現在も引き続き学習データを集めており、月に10万件ほど集まってきているのでひたすら機械学習を続けています。
国としてはインド、北米に使われている割合が多いです。その次にヨーロッパ、あと中東からの利用もあります。


Voice UIからコマースへの展開

スマートスピーカーが市場に出てまだ間もないですが、テキストの外にあるような感情を理解して使ったサービスはまだなく、そこに商機があると考えています。
例えば、スマートスピーカーをチャネルとした商品販売(EC)を行うボイスコマースという領域です。
米国の調査会社の調べによると2017年の段階で、音声インターフェイスを介して約2000億円の商品販売があり、、2022年にはその規模が約5兆円を超えると言われています。我々は感情を理解させることでその仰角をさらに高めることができると考えています。

我々の事例としてアウトバウンドセールスのコールセンターにおいても感情解析を導入すると、極所的ではありますが、約20%売上増に寄与したというデータが取れています。
従って、オペレーターに対して、この人は買いそうだからプッシュ、ダメそうだから諦めようという指示をリアルタイムに出力できるコールセンターAIを現在開発しています。2019年3月にアルファ版、今夏には外部の方にもにご利用いただけるサービスの開発を進めています。
コールセンターにおいて人と人の間での感情のやりとりから、購入に至る行動変化の兆しをみつける研究を現在行っています。今後この研究結果がスマートスピーカー対人のような機械と人のコミュニケーションの中でも成り立ちうるという仮説をもってボイスコマースのフィールドにおいても感情解析が利用できるのではないかと考えています。




CEO下地 貴明
「僕らがやっているのは『アフェクティブ・コンピューティング』というコンピューターサイエンスの領域。感情を理解するコンピューターです。」

株式会社Empath
https://webempath.net/lp-jpn/



■河上 純二 a.k.a JJプロフィール

ビジネスプロデューサー/パーソナリティ/モデレータ
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