一年で最も寒いと言われるこの季節。乾燥した空気、年末年始の暴飲暴食で弱った体。風邪やインフルエンザも猛威をふるっていますが、皆さま元気にお過ごしですか?

え? 気持ちも体も落ち込み中? 寒い日は無理せず自宅でゆっくり過ごして、早めに寝るのが一番ですよ。

…といいながら、今回も寒空の中で、体を張って作例を撮ってきた私(笑)。わかりやすいBefore / After写真でお伝えしたかったのはズバリ、“加工アプリの罠”です。

SNSに写真を投稿しまくりな、“かわゆいあの子”たちが、普段どういう風に加工しているのか。その実態を知ることは、撮影者であるあなたにとって、超・超・超・超重要事項。今回の記事を読めば、「だからこういう撮られ方が嫌なのか…」と腑に落ちまくるはずです。

アプリで顔面を盛りまくる“加工女子”たち

百聞は一見にしかず。作例を踏まえて、説明していきます。

歪みが影響する背景・上から

まずはよくあるツーショット。少し上からのアングルで、きちんと“盛れている”写真です。目は大きく、顎は小さく写っています。対して、正面から撮られているのがこちらの写真。

歪みが影響する背景・正面元の写真

個人的には、これでも充分綺麗に撮れていると思いますし、先程見ていただいた上からの写真と見比べても、「違いがわからない」という方がいるだろうなとも思います。…だがしかし。それでも気に入らないのが“加工女子”という人種です。

まずはアプリ「B612」を使って、ほうれい線を消し、目を大きくします。さらにはアプリ「beauty plus」を使って、顔を小さく、色を明るくし、肌がなめらかになるよう加工しました。

余談ですが、この時私、「顔が小さすぎて手が大きく見えるなー」と無意識に手の部分をトリミングしていました。そう無意識に…。習慣って怖い。

加工①:歪みが影響する背景・正面/ほうれい線修正&パーツ修正
加工②:歪みが影響する背景・正面/ほうれい線修正&顔パーツ修正→小顔&トリミング
加工③:歪みが影響する背景・正面/ほうれい線修正→小顔&顔パーツ修正→色調整&肌ぼかし

さて、出来上がりました。この加工過程を読んで&ご覧になって、「顔を小さく?」と驚いた方もいるでしょう。最近の写真加工アプリは本当に優秀です。簡単な操作で、顔全体をキュキュッと小さくできます。

肌を綺麗にするなんて当たり前。顎だけ、鼻だけ、目だけ…。特定のパーツを大きくしたり小さくしたり、顔面を自由自在に変えられるのです。

ただ、パーツを細かく変えてしまうと、配置がだんだん狂ってきて、「私の顔ってどういうレイアウトが正解?」と、ゲシュタルト崩壊しがちです。なので、もっと簡単に、「頭自体を小さく見せる」機能を使います。この機能だと、顔面のレイアウトが不自然になることなく、アプリが判断して自然な小顔にしてくれるのです。テクノロジーの進化って素晴らしい。

ただ、この便利な「小顔加工」の裏には、1つ落とし穴が潜んでいます。すでにお気づきの方も多いかと思いますが…、そう、やりすぎると、背景が歪むのです。顔面の後ろに空間のゆがみが現れています。今回の背景のように、直線で構成された壁や建物などだと、歪みが大変わかりやすい。最後に加工過程をgifアニメーションにしてみましょう。

加工手順をgifアニメーションにしたもの

階段が波打っていると、よく分かりますよね。

空間がゆがみがちな背景とは?

画像加工ソフト「Photoshop」にも、同じく「ゆがみ」という機能があります。カメラマンさんやデザイナーさんにはおなじみのヤツです。スマホの写真加工アプリで使える「小顔加工」機能とはつまり、この「ゆがみ」を顔面に対してのみ使い、相対的に顔が小さく見えるようにしてくれている…というわけです。

さらに作例をご覧ください。こちらでも同じことを、違う背景でやってみましょう。まずは撮影場所を探して…と。いいところを見つけました。

歪みが影響しない背景・上から

場所としてはこんな感じ。後ろに葉っぱなどのフェイクグリーンがもりもりです。正面から撮るとこんな感じになります。

歪みが影響しない背景・正面元の写真

うん、顔面デカめかな。さぁ、ここから撮影したものを加工していきましょう。

加工①:歪みが影響しない背景・正面/ほうれい線修正→小顔&顔パーツ修正
加工②:歪みが影響しない背景・正面/ほうれい線修正→小顔&顔パーツ修正→肌ぼかし

いかがですか? 背景に規則性がないので、加工後も自然に見えますよね。そう、こういう背景が、加工しやすい背景なわけです。かわゆいあの子に写真撮影を頼まれたら、さりげなくこうした“加工しやすい背景”を選んであげましょう。好感度アップ間違いなしです。こちらも一応、gifアニメーションにしておきます。

加工手順をgifアニメーションにしたもの

こうしてアニメーションさせると、空間を歪めていることがよく分かります(笑)。ただ、でき上りは自然だから、最終的な写真のみを見たら、加工しているとは思えません。

ただ…。歪むのは背景だけじゃないのです。
例えばこんな、よくある「いま〇〇ちゃんと飲んでまーす!」という写真。

グラスを持ったポーズ・元の写真

白い背景ですから、これなら「小顔加工」しても問題がなさそうに見えます。というわけで、まずはサクッとほうれい線を消しましょう。笑顔を作るとほうれい線が深くなるのは当たり前なのですけどね。自然現象すらも消したい、それが“加工女子”です。

キュキュッと「小顔加工」もかけて、美肌加工もきちんとして…と。はいできた。これで見慣れた私になったはず。と思ったら、あれれ?

グラスを持ったポーズ/ほうれい線&顔パーツ修正
グラスを持ったポーズ/ほうれい線&顔パーツ修正→小顔修正
グラスを持ったポーズ/ほうれい線修正→小顔&顔パーツ修正→色調整&肌ぼかし

同じ形のグラスを持っているはずなのに、、それぞれなんともアーティスティックな形に変形しています。一点ものの手作りグラスかな。

この部分を拡大してみましょう。

歪んだグラス(拡大)

こうなると、被写体が美しい以前の問題です。不自然に湾曲したグラスは、もはや不気味。まがまがしさすら感じます。「小顔加工」ありきで撮影するなら、顔の近くにまっすぐなものを持ってこないこと! これも大事なお約束です。

加工しなくても撮影テクニックでしっかり盛れる!

今度は、記念写真などで多い立ちポーズのNG例を見ていきましょう。

立ちポーズ上から・元の写真

むむ。この写真、私がこの連載で何度も何度も訴えている、“小顔足長角度”から撮影できていませんね。やや上から撮られているので、なんとも顔デカ短足に見えています。しかも暗い。褒めるところがない写真とはこのことですわね(遠慮なし)。

撮り直しはできない、それでも全身が写った写真は載せたい…。

こんなときも加工アプリが活躍します。問題なのは顔デカ短足に見えることなのですから、それを加工で解決すれば良いのです。

立ちポーズ上から・小顔修正
立ちポーズ上から・小顔修正→足伸ばし加工

まずは頭を小さくしましょう。さらにその後、足を伸ばします。はい、これでサクッと解決!! パッと見、ナイススタイルな2人になりました。…でもあれ? 背景が!?

歪んだ背景(拡大)

やはり歪んでいます。三度、空間を歪めてしまいました。そして改めて思うのが、「髪が濃く見えるなぁ」ということ。「顔を小さくする=髪の毛が多く見える」なんですよね。

美術の授業で一点透視図法を学んだかと思いますが、あの仕組みで足だけを伸ばしているため、立っている場所によっては足を伸ばすことで背景に歪みが生じます。ただ、パッと見は小顔で頭身が高く、スタイルよくなっていますね。

ここで、同じ場所からカメラ位置を下げて撮影したものも見てみましょう。暗いのは仕方ないので、色のみ明るく加工しました。こちらは人物の形に、一切手を加えていません。

立ちポーズ・元写真
立ちポーズ・色調整

最後に、上から撮った写真と下から撮った写真を並べてみましょう。加工で小顔にしたものは、なんとなく不自然な様子がわかると思います。

立ちポーズ上から・小顔修正→足伸ばし加工
立ちポーズ・色調整

加工しなくても撮影テクニックでしっかり盛れる。これを実感いただけたのではないでしょうか。しかも、ここでいうテクニックとはずばり、「上から撮るか下から撮るか」だけの話。撮影時のちょっとしたひと手間が、如何に大事か、よく分かりますね。

重ね加工に要注意!

肌色、スタイル、鼻の大きさに目の形…。ルックスの悩みは千差万別です。つまり、個々の悩みを解決するのに適したアプリもまた多種多様といえます。

モデル仲間の子たちを見ても、「本当にみんないろいろなアプリを使っているな」と思うのです。しかも「小顔加工はこのアプリ」「肌ならこれ」などと、複数使い分けている人が多い。「自分が思う本当の自分」を創り出すため、かわゆいあの子たちは、昼夜を問わずに、加工アプリを研究しているのです(笑)。ただそうなると、「一枚の写真に対して複数のアプリで加工を繰り返す」事態に。

SNS上の投稿で、輪郭かぼやけているような写真を見かけませんか? 「肌をなめらかにする加工のやりすぎ」というケースもありますが、それとはまた違う“低画素感”がある写真です。画像を拡大すると分かりやすいのですが、あれは「アプリで加工→保存」を繰り返したことで、画像が圧縮され、荒れてしまった結果です。

この現象がおきがちなのは、女子だけの集合写真ですね。写真に映っている女子たちがリレー形式で写真を回して、自分の顔を加工していくこと、よくあるのです。そうすると、「アプリで加工→保存」を繰り返すことになって、画質が低下…。みんな「キレイな私」にしたいはずなのに、だんだん写真の画質が悪くなるというのは大きな矛盾と言えるでしょう。

これを解決するにはどうしたらいいでしょうか? そう、元の写真で盛れていればいいのです。ただそれだけの話。そうした観点から考えても、撮る側の責任は重大といえます。

加工にも限界がある。それを心にとどめつつ、撮影時には角度と光を、うまく使ってください。かわゆいあの子をかわゆいままに、むしろさらにかわゆく盛って撮るには、あなたの力が必要です!

モデル協力:椿かおり @WGD_shop

テレジア先生への公開質問

とあるファンの人が、SNS上で返事を強要してきたり、私と親しい友達から個人情報を聞きだそうとしたりして、とても困っています。周りにも迷惑がかかりだしたので、何か対応しないといけません。でもどうすればいいのか…。 (モデル・女性)

SNSがあるから生まれてしまった悩みでよね、これは。

かつて、モデルや俳優などといった“表に出る仕事”の人は、どこかの事務所にマネージメントされているのがほとんどでした。ファンと直接話したり、会ったりするなんてありえない。それが普通だったわけです。

今は違います。個人が、自分で自分をブランディングし、プロモーションして売る時代です。仕事の相手ともファンとも、SNS上で直接やり取りできる。会う機会も自分で生み出せる。すべてが“あなた次第”ともいえ、ある意味では自由、ある意味では恐ろしい時代になりました。

この相談コーナーでは過去に、「SNSで返事が来ない」という男性の悩みを取り上げましたが、そのときお答えした内容とは逆バージョンといえるお悩みですね。こうした問題のほとんどは、双方で思う距離感の違いから生まれている、そう思います。そしてそれは、出演者と観る側という、今回のような関係性に限りません。

例えば、「職場が同じだけど、とくに話すほど親しくない」という人がいたとします。気を抜きまくって街を歩いている休日、そんな関係性の人から突然声をかけられたら…、びっくりしますよね。嫌だなとも感じるのではないでしょうか。

ここでのポイントは、親しさの度合い、その認識がズレていることです。

恋人、友人、知人。人間関係のカテゴリー分けは人によってまちまちですが、突然声をかけても不自然でない関係の人、その条件を定義するなら、このような人になるでしょう。

①個人的な連絡先を「本人から」伝えられて知っている
②双方の関係性に金銭が発生していない
③事前に約束して、飲食を楽しんだことがある
④相手に対して気まずい思いを、双方がしていない。
⑤用事以外の雑談などで、弾むやりとりがある

しかし、どれだけ親しくても、相手が他人から見られることを意識していないとき、例えば部屋着でコンビニに来てるとか、友達や家族と楽しんでる時には、遠慮して話しかけないのが、気づかいであり思いやり、もしくはマナーなのだとも思います。

話を相談者さんのお悩みに戻しましょう。

改めてですが、相手のことを知りたいがあまり、親しそうな人にプライベートなことを聞くのは、NG行為です。聞かれた方も困りますし、「自分が伝えてない情報を相手が知っている」という状況は、ホラー以外の何物でもありません。

そんな人に対して、SNS上で返事をするでしょうか? 返したくないと思わざるをえない状況が、すでに出来上がっているわけですよね。つまりあなたは、そのファンから迷惑を被っているわけです。

ならば、「なぜ困っているのか」を丁寧に伝えること、オススメします。もちろん、言葉を選ばないといけません。相手を批判するのでなく、純粋に自分が困っていることを伝えてください。

意外と、これで解決してしまうかもしれません。こうした迷惑行為をする人って、「その行為を相手が嫌だと感じている」とは、まったく思っていないパターン、多いです。だから、「嫌なことは嫌だ」と、はっきり伝える。そうすることで、今後もそのファンの方と、良い関係を作っていける可能性もあると思います。

一方で、「良い関係を続ける必要なんてない」のなら、SNS上で無視でもブロックでもミュートでもなんでもしてください。遠慮なんていりません。あなたの人生から、迷惑な人の存在を抹消しましょう。一番手っ取り早く、心安らかになれるはずです。SNSになぜそうした機能があるのか考えればわかります。それが全世界でスタンダードな答えなのです。

私自身もそうですが、“表に出る仕事”の方は、ファンの人とどういう距離感、関わり方であるべきなのか、定期的に考え直す機会を持つといいでしょう。セルフブランディングするにあたって、SNS上で自分がどうふるまうべきかなどのルールを明確にし続ける。今の時代、これってかなり大事なことなのではと思います。

“表に出る”方もファンの方も。応援したり応援されたりで、ワクワクする楽しい日々を過ごしたいですよね。

※老若男女問わず、撮影に関する人間関係のお悩みを随時募集! 写真が好き、撮影会が好きな皆さん。ここはあなたの心の保健室。個人が特定できないように配慮いたしますので、私のTwitterアカウント(https://twitter.com/red_theresia)にDMで気軽に質問ください。

テレジア
京都市立芸術大学 デザイン科卒。モデル兼コスプレーヤー、レタッチャー、たまにウォーキング講師。元準ミス日本。デザイン・アートの造詣と、プロモデルとしての現場経験を兼ね備え、ライティングや人体構造、色彩設計などを考慮したレタッチを得意とする。高校美術工芸教職免許を持ち、非常勤講師経験あり。