MITのエンジニアは、1mW(メガワット)=1,000kW(キロワット)の電気モーターの開発に成功し、大型電気航空機の分野で重大な偉業を達成しました。この画期的な進歩により、2050年までに二酸化炭素排出量”実質ゼロ”を達成するという野心的な目標に近付くことが出来ます。

現在も、従来の航空機は多量の二酸化炭素排出量を排出しており、航空業界内で大幅な革新が必要となっています。しかし、大型ジェットエンジンを置き換える場合、航空機を電動化するための既存のソリューションには限界があります。

完全な電気飛行機を製作する試みはありましたが、これらの挑戦はほとんどが小規模で、モーターが生み出す電力はわずか数百kWに過ぎませんでした。この制約を認識していたMITのエンジニアチームは、大型航空機が持つより高い電力要件を満たす1mWの電気モーターの開発に着手しました。

従来の航空機は現在もかなりの二酸化炭素排出量のままです(画像: Kuba BożanowskiDiamond DA42 Twin Star SP-NBA — pre-flight」)

 

電気モーターの設計には多くの課題が


1mWの電気モーターの設計には、内部の仕組みを包括的に理解する必要がある多くの課題が伴います。電気モーターは通常、銅コイルに電流を流すことで、電気エネルギーを利用して磁界を生成します。

生成された磁場とコイルの近くに配置された磁石の間の相互作用により回転運動が発生し、ファンやプロペラが推進されます。より大きな電力を作り出すには、より大きな銅コイルが必要になります。ただし、これは発熱の増加にも繋がるため、モーターの設計に冷却要素を組み込むことが必要です。

MITのエンジニアによって設計されたモーターは、様々な極性方向に向けられた磁石を備えた高速ローターを備えています。これを補完するのが、複雑な銅巻線が充填されたコンパクトで効率的なステーターです。さらに、高周波で銅巻線を流れる電流を正確に操作出来る30枚の特注回路基板を採用した分散型パワーエレクトロニクスシステムを開発しました。

伝送中の電力損失を最小限に抑えるために、回路基板はモーターとシームレスに統合されており、統合された熱交換器によって動作中の効率的な空冷が保証されます。現在、研究者らは個々の部品のテストを実施し、システムが1mWという驚異的な出力を生み出すことが出来るかどうかを確認している段階です。

航空を電動化するための第一歩となるか?


今後数ヶ月以内に、コンポーネントが組み立てられ、このモーターは統合ユニットとして厳格な総合テストを受ける予定となっています。このモーターがリージョナルジェットへの動力供給に適していることが今後判明し、将来の航空機の設計では翼に沿って統合された複数のモーターが組み込まれる可能性がある、と研究者らは非常に前向きに考えています。

MITのエンジニアが進めるこの取り組みは、大型電動航空機の革命に向けた大きな前進を意味しています。この1mWの電気モーターが秘めるポテンシャルは、持続可能な航空の新たな可能性を切り開き、二酸化炭素排出量を削減し、航空輸送の未来を形作るという世界的な使命に貢献することになるでしょう。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

原文はこちら