Lenovo ThinkPad X13sは、これまでで最高のSnapdragon搭載ラップトップ
良い点
|
悪い点
|
評価
|
非常に高い電力効率 | USB-Aポートは無し | 8.8/10 |
長時間持つバッテリー | 一部のアプリは起動しない | |
高い耐久性と耐水性 | サイズ対性能の比率は改善の余地あり | 価格 1,300ドル〜 |
法人レベルのサポート | ||
ほとんど全てのx86アプリが使用可能 |
「Lenovo ThinkPad X13s」は、Qualcommとの緊密な連携によって作り上げられた、Lenovo初のSnapdragon搭載ThinkPadとなります。これは、Snapdragon 8Cx Gen 3の中でも最も優れたプロセッサで、生産性、接続性、操作性、安全性といういくつかの柱を基に作られています。
会社員の作業には十分で、ゲームをプレイすることも出来ますが、そういった用途に特化して作られた訳ではありません。オフィスでの作業に関しては、5G通信機能が内蔵されているおかげで、バッテリー残量とWiFi性能を気にすることなく使用することが出来ます。
ウェブアプリやMicrosoft 365サービスを中心にパソコンを使用している場合には、このデバイスに注目する価値があるかもしれません。このラップトップは、モバイルPCの体験を永久に変えてくれる可能性があります。
構成
ThinkPad X13sの全てのモデルには、13.3インチのFHDディスプレイとSnapdragon 8Cx Gen 3プロセッサが搭載されています。今回レビューに使用した機体は、16GB RAM、タッチディスプレイ非搭載、512GBストレージという構成になっています。実際には、より多くのオプションからお好みの構成を選択することが可能です。
FHDディスプレイには3つのオプションが用意されており、内2つは300または400ニトの輝度で非タッチのディスプレイとなっています。最大輝度400ニトのモデルは、仕様上は全体の画質が向上しています。300ニトのモデルにはタッチ対応のオプションがあり、用途によってはこちらを選択する人もいるでしょう。
RAMは増設不可で、注文時にLPDDR4Xの8/16/32GBから選択することになります。ほとんどの人にとっては16GBで十分ですが、その必要性を理解している人が32GBにアップグレードする選択肢があるというのは素晴らしいことです。NVMe SSDのストレージは、最低でも512GBで1TBまでアップグレード可能です。
このように、それぞれのモデルに大きな違いがあります。その他にも、ミリ波5G対応モデルや、45/65Wの充電に対応したモデルがそれぞれ存在します。
公式ページでは、販売価格は1300ドル〜となっています。
製品デザイン
Lenovo ThinkPad 13sのデザインには、ThinkPadの象徴的なマットブラックが採用されており、遠目で見ると、 ThinkPad X1 Carbon Gen 9とThinkPad X1 Nano Gen1の中間に位置するような見た目になっています。
薄さ13.4mm、重量1.06kgと非常に軽量設計で、本体サイズは298.7 x 206.4 x 13.4 mmとなっています。
よく見ると、曲面と丸みを帯びたエッジを備えたデザインの微調整が加えられていることがわかります。本体のカラーリングは、従来のThinkPadの塗装よりも手触りが柔らかく、スエードの表面にようにも見えるゴム引きの素材となっています。
外装の下を見ていくと、本体の90%がリサイクルされたマグネシウム合金で作られています。LenovoはSDGsへの取り組みも強化しており、多くの再生プラスチックも使用しています。プラスチック製の製品も確かに沢山ありますが、この取り組みを率先して実施している企業の数は十分とは言えません。
背面カバーの上部には、目立つ”カメラバー”が搭載されており、より大きく高画質なカメラモジュールを搭載することが可能となっています。この点に関しては、後ほど説明します。
底面カバーは取り外し可能となっており、仕組み的にはSSDを交換することも出来ます。しかし、冷却プレートの下に位置しているので、一般的なユーザーにとっては手間となるかもしれません。
修理が必要な場合には、Qualcomm X55 5Gにもアクセスすることが出来ます。SIMスロットも搭載されていますが、eSIMにも対応しています。このモデム(及びQualcommのWi-Fi/Bluetoothハードウェア)は世界レベルの接続性を示しており、世界中で使うことが出来るはずです。
冷却用の通気孔が無いことに気付かずにはいられませんが、これには正当な理由があります。このラップトップは受動的に冷却され、ファンの騒音も気になりません。勿論、他のThinkPadシリーズ同様に、MIL-STD-810H(米軍規格)が認証された非常に頑丈な作りとなっております。
キーボードとトラックパッド
ThinkPad X 13sは、他のThinkPadシリーズに採用されているような見た目の、防水対応のフルサイズキーボードを備えています。このサイズ感によって、キーストロークは0.9〜1mm前後になっているようです。キーは、ThinkPad X1 Nano Gen1のようにカチカチしておらず、非常に静かで柔らかい打ち心地となっています。
Mylarトラックパッドはとても滑らかな動きで、ガラスのようです。56×116 mmという大きなタッチ面で、有効活用出来そうです。トラックパッド上のタップ操作よりもはるかに正確だと思われる物理ボタンが無ければ、全体的にもう少し大きくなっていたかもしれません。
当然、伝統であるTrackPointも継続され、従来のThinkPadと同じように動作します。キーボードを見やすくするために、薄暗い場所では2段階のバックライトから選ぶことが出来ます。
ポート類
本体左側面には、USB-C 3.2 Gen2 10Gbpsポートが2基あり、どちらもラップトップの充電に使用可能です。Thunderboltは、40Gbpsのデータ転送に対応したIntelのテクノロジーですので、Qualcomm製プロセッサを搭載する本機のUSB-CポートはThunderboltとの互換性はありません。
とは言え、USB-C 3.2 Gen2も十分な仕様で、この小さなラップトップに2台の4Kディスプレイを接続することが出来ます。ドックを使用すれば、ケーブルを1本繋ぐだけでThinkPad X13sがデスクトップコンピューターに変身します。
右側面には、従来の3.5mmオーディオジャックと、Kensingtonの盗難防止コネクタが備えられています。
音質
このラップトップには、2Wステレオスピーカーがキーボードの左右にあり、これは間違いなく最適な配置です。このようなコンパクトなラップトップに、それよりも大きなモデルでも搭載出来ない機能を詰め込んでいるのは素晴らしいことです。
このサイズのコンピューターとしては素晴らしい音質で、映画を視聴する際にも声が非常にクリアに聴こえます。低音域には改善の余地がありますが、使用可能な内部スペースを考えると、サブウーファーが内蔵されていないことでLenovoを責めることは出来ません。
その音質は、デスクやホテルの部屋でビデオ会議をしたり映画を観たりするのに最適です。ちなみに、本体が小さいため、飛行機のテーブルにも理想的なサイズになっています。
ディスプレイ
1080p/FHDの解像度は最適な選択で、3:2の画面比率が、特にオフィス業務に使用する場合に、どのように作用するのか気になるところです。前述の通り、タッチの有無以外にもいくつかオプションが用意されています。
sRGBの色域をほぼ100%カバーしているので、色の再現性は素晴らしく、この価格帯のラップトップで一般的な300〜400ニトの輝度となっています。ディスプレイの品質は、軽めのクリエイティブな用途(ウェブ開発やPhotoshop等)にピッタリです。
上部のカメラモジュールはThinkPadシリーズの中でも大幅な改善点で、この5MP(f値 2.0)のカメラはこれまでに見た中で最高のウェブカメラです。
Lenovoは正しい道を選択しており、品質向上のためなら、多少カメラ部分が大きくなっても気になりません。ラップトップがスマートフォンレベルのカメラを搭載出来ない理由は無く、Qualcommとの連携はそれを実現するための近道になるかもしれません。
物理的なシャッターボタンはありませんが、ショートカット(alt+F9)でON/OFFを操作することが出来ます。唯一の欠点は、物理的なカメラカバーが無い点です。将来的には、赤色LEDまたは他の何かが導入されるかもしれません。
カメラはWindows Helloと互換性があり、安全にログインする1番の方法です。もし指紋認証の方が好みであれば、電源ボタンにリーダーが内蔵されているので、そちらを利用することも可能です。
パフォーマンス
Qualcomm Snapdragon 8Cx Gen3は、電力効率が高い、ARMベースの素晴らしいプロセッサです。ThinkPad X13sは、バッテリー寿命に関して、ほとんど全てのIntel搭載ラップトップに匹敵しています。
ベンチマークによると、純粋な処理能力という観点から見ると、AMD Ryzen 5 4500Uもしくは第11世代 Intel Core i5とほぼ同等です。同じフォームファクターでバッテリー寿命を犠牲にしても良いという方は、Intel i7 1160G7を搭載したThinkPad X1 Nanoを検討することをお勧めします。
Windows 11で、32/64bitのx86アプリケーションを実行出来るようになったため、Snapdragon 8Cxプラットフォームはこれまで以上に重要になっています。アプリの互換性はさらに向上し、通常のアプリで問題が発生することはありません。Photoshopを含め、ほとんど全てのアプリが起動出来ました。
“一部のアプリ”は、まだ使えないかもしれません。例えば、3dMark Night Raidは、同シリーズの中で唯一動作します。DaVinci Resolveは、互換性のあるGPUを認識してくれません。このような例外が他にもある可能性があるので、こういった高性能なアプリの互換性について事前に調べる方が良いでしょう。
互換性を調べることが出来るデータベースをMicrosoftが用意してくれると助かりますが、何度も言うように、これはオフィス業務向けのラップトップです。
その一方で、最新のGTAのようなゲームを実行することは出来ますが、描画は20fpsと比較的遅くなります。x86エミュレーションはストリーミングクライアントのパフォーマンスにほとんど影響を与えないため、ゲーム用途での最善策は、GeForce Nowやその他のゲームストリーミングサービスを利用することです。
最後に、本機の冷却システムはウェブブラウジングやオフィス業務では優れた役割を果たしますが、激しいゲームでは十分な速さで排熱することが出来ないため、高負荷なアプリでは最終的にサーマルスロットリング問題に直面することになるでしょう。結果的に、システムは排熱能力に合わせて自動で処理速度を制限してしまいます。
ThinkPad X13sは、オフィス業務で優れた性能を発揮し、動画視聴や資料の閲覧といった用途では驚異的なバッテリー持ちを実現します。これまでのARMベースのコンピューターとは違い、本機は”普通の”Core i5搭載ラップトップのように使用することが出来ます。
バッテリー
ThinkPad X13sは並外れたバッテリー寿命を備えており、先日の旅行では出先での作業や5G常時接続でテストを行いました。バッテリー持ちに関して不満を感じたことは1度も無く、バッテリーが無くなるより先に、ユーザーの体力が無くなりそうです。
49.5Whのバッテリー容量は、私達の推測ではオフィス業務で14から16時間はコンピューターの電源を維持するのに十分なほどです。1日に8時間しか働かないのであれば、日を跨いでも使用することが出来る、とQualcommとLenovo両社が述べています。画面を閉じた状態では、従来のラップトップよりも消費電力が低くなっています。
Lenovoによると、ローカルファイル(本体ストレージ上のMP4)の映画を再生した場合、電力の設定にもよりますが(パフォーマンス優先/バッテリー優先)、他のアプリがバックグランドで起動しておらず、WiFiや5GがOFFの状態なら、150ニトの輝度で22から28時間の連続再生が可能なようです。
充電の際には、100%まで達するのに1時間20分かかります。将来的にLenovoがこれをさらに速くすることが出来れば、それは素晴らしいことです。OnePlus 10Tのように、20分で満充電することが出来るスマートフォンを最近テストしましたが、非常に中毒性があります。
まとめ
Lenovo ThinkPad X13sは、これまで見てきた中で最高のSnapdragon搭載ラップトップであり、長時間バッテリーや高い接続性、1段階上のウェブカメラ品質といった最近のニーズをカバーしているので、移動が多い人や在宅勤務のユーザーにとっては競合製品と比べて大きな違いが生まれます。
このデバイスは、これまでテストしてきた中で、Intel Core i5搭載コンピューターと同じような感覚で実際に使用出来た初めてのARMベースのコンピューターであり、ラップトップ市場におけるQualcommの競争にとって転換点となりそうです。このセグメントでの立ち位置を確立することが出来れば、すぐに処理能力を強化するための方法をQualcommは数多く用意しています。Appleが、それを証明しています。
IT企業の場合、このラップトップにはLenovoのPremier Support、ThinkShieldや安全な管理機能が付属するため、管理が容易になり、実際に時間とお金を節約することが出来ます。一般の消費者としては考慮しない点かもしれませんが、セキュリティ面が理由で従業員にThinkPadしか提供しない企業を沢山見てきました。中小企業にはIT部門が設置されていない場合もあるので、このサポートレベルは手助けとなるかもしれません。
最後に、本機は衝撃や水に耐えられる頑丈なラップトップです。出張の途中でラップトップが使用不能になることほど、最悪なことはありません。
この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。
原文はこちら