モバイルGPUは、機能面でデスクトップGPUより何年も遅れているため、盛り上がるニュースはそれほど多くありません。しかし、ARMがハードウェアベースのレイトレーシングをサポートしたGPUを設計したというのは、注目に値する出来事です。

この新型GPU「Immortalis-G715」は名前もクールですが、ARMはシェーダーコア領域の4%しか使わずに、従来のソフトウェアベースのソリューションより300%も性能を向上させています。モバイルゲームには普及していない機能としては、非常に妥当な数字のようです。

そのため、開発者がテストすることが出来るハードウェア機能をARMが導入することは、賢明だと言えます。一方、各メーカーとエンドユーザーのコストは僅かなままです。Immortalis-G715は、ドライバやグラフィックスAPIの開発チームが作業をさらに検証するための優れたプラットフォームとしても機能します。

最後に、アプリの1次段階でアーキテクチャがどのように機能するかを確認するために、多くの審査が行われます。

ARMは、可変レートシェーディング(VRS)にも対応しています。目立ったディティール(煙や霧など)が無いため、この機能によって、グラフィックスを担当するプログラマーは半分か4分の1程度の解像度でレンダリング可能な画面領域を定義出来ます。レイトレーシングと直接関係はありませんが、VRSも全体のパフォーマンスを底上げし、一般的なフレームレンダリングのごく一部としてレイトレーシングを導入するのに役立ちます。

明らかになっていない情報は、1秒あたりにどれほどの光線を投じることが出来るのかということです。アクセラレーション構造は効率的なものだと思いますが、確かではありません。ARMは、レイトレーシングの有無を比較したデモを公開しています。

それを見る限り、レイトレーシングが有効にされたシーンの特徴は、透明度、反射、および陰影の3つです。これら3つの要素は、ラスタライズと比較してレイトレーシングの恩恵を受ける傾向にあります。その差は人為的に誇張されていますが、特に専門家では無い人に対して、レイトレーシングとは何かを説明するためには適切な方法です。

実際のPCゲームを含む各シーンは、通常、レイトレーシングを完全に使用して描画されるわけではありませんが、上の動画で先に挙げた特徴を確認することが出来ます。

影の柔らかさが比較的少なく、反射と屈折で使用されている光線も少ないので、パフォーマンスは高くなく、高い性能は期待されていません。カメラの視点も固定されているので、全てがフレーム毎に再レンダリングされるかどうかはわかりません。繰り返しになりますが、これが性能によるもので、デモを使った古典的なトリックである可能性もあります。

ソフトシャドウやグローバルイルミネーション、ダイナミックライティング無しでは、ARMが最新のハードウェアレイトレーシングで最も重要な部分である”ノイズ除去”を行うことに成功したかどうかを判断するのは困難です。おそらく、その点が今後の焦点になる可能性があります。

レイトレーシングの電力効率は、デスクトップ向けGPUよりも高い可能性があり、ARMはその点についても打ち出したいと考えているのかもしれません。

幸いなことに、多くのゲーム開発者がPC上でレイトレーシングを経験しており、一部のワークフローでは良い成果が出ています。モバイルデバイスで多くの派手なエフェクトはまだ期待出来ませんが、今後レイトレーシングがモバイルゲームに導入されることは必然でしょう。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

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