コロナウィルスの感染拡大、非常事態宣言発令。日本はもちろん、いま世界が激動しているなかで、読者の皆様も毎日をとても大変な思いで過ごされていることでしょう。私も一緒です。

1日も早く終息して、平穏な日々を取り戻せますよう、stay home, stay healthyで、皆さんとこの災難を乗り越えていければと思います。

ところで……。そう、そこ、あなたのお部屋。その部屋にあなたは、写真を飾っていますか?

写真を生業としている私は、意識してプリントする様にしています。子供の写真や仲間との大切な思い出、仕事のアイデアなど、様々なものをプリントして残しているのです。

膨大になると見返さなくなるデジタル写真

もちろん、私が仕事で撮影に使っているのはデジタルカメラですし、プライベートではiPhoneでバシバシと撮影しています。ですから、撮影時に生成されるのはデジタル画像です。

仕事柄、保存用に大切な画像データをクラウド化したり、外付けのハードディスクに保存したり、 DVDに焼き出したりと、普段からデジタル画像を整理するようにしているものの、これが本当に大変。皆さんは上手に整理出来ていますか?

去年は8TBものハードディスクが突然動かなくなり、焦りました。どうにかしたいと思って修復の見積もりをとると、出てきた金額は80万円。頭が真っ白になりましたね(笑)。

また、頻繁にあるのが「昔焼いたDVDが読めなくなる」というパターン。そう私の作品はこの世から簡単に消えちゃうんです。

皆さんも思い当たるのではないでしょうか。携帯で撮影した画像、そのすべてを残せていますか? 仮にクラウドへ全部保存しているとしても、膨大な数になると、なかなか見返す機会もないのでは。ぱっと見つけられないですしね。

なので、私は大切な思い出をプリントするようにしているのです。プリントしたイメージは見やすい、見せやすい。これはデジタルにない魅力といえます。

記憶装置としての写真

9年前に起きた、東日本大震災の時。私は「写真なんか撮ってる場合じゃない!」と、居てもたってもいられずに、支援活動を始めました。支援物資を持って、せっせと被災地に通う中で、被災された方々が写真をとても大切にしていることに気づきます。

被災した建物の前には、自衛隊によって掘り出された大量のアルバムが積んであるわけです。「家族一緒の写真」「亡くなった〇〇の写真」「子供が赤ちゃんの頃の写真」など、生きることだけでも大変な時期なのに、たくさんの人が写真を、アルバムを探している。

その現場を見て、改めて写真に出来ること、写真家に出来ることを見つけた想いでした。

過去は変えられないけれど、「今」そして「未来」は変えられるんじゃないか。そう思い、私は彼・彼女らの「今」を撮り始めました。自分のために撮る作品ではなく、彼らの為になる写真、何年か後の彼らを支えるような写真になったら良いなと祈りながら。

この経験でより認識を強めたのが、「写真って記憶装置なんだ」ということ。「あの時」を思い出す装置として、写真は機能しているのだと。

「あの時楽しかったな」とか、「こんな大変な時でも頑張れたのだから、まだ頑張れるはずだ」とか、写真を見て思い出すことは様々ですが、その思い出、その時の想いが、写真には焼き付いている。その想いがきっと、いつかあなたを支えたり、励ましてくれたりします。

コロナな日々を強く生きる姿、大切に残しましょう

新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、日本では今、卒業式や入学式がなくなったり、子供や家族にとってとても大切な区切りが失われていますよね。本当なら、家族そろって校門の前で写真を撮りたい。そうした願いが叶わない時代です。

でもね、ちゃんとした写真を撮れなくたって良いから、自宅だったり、学校の前だったり、近所や公園を散歩した時だったり、何でもよいので、人生の大切な瞬間、“コロナ渦”に過ごした毎日の思い出を、1枚でも2枚でも撮っておいてください。それを見れば、いつか「あの頃はコロナで大変だったね」と思い起こせると思うのです。

私には、フォトグラファーとして色々な写真を色々な目的のために撮ってきた中で気づいたことがあります。大切なのは「綺麗な写真」じゃなくて、その時の「想い」や「季節の匂い」「気持ち」を捉えることなのだと。そして、画像をプリントして残すことが、その「想い」をより強く残す行為になると感じます。そうした意味で言うと、写真はプリントして初めて、「写真」になるのかも知れない。

そして。コロナが落ち着き、もしも大切な思い出を写真に残したいと思ったら……。ぜひ、たかはしじゅんいちの「出張写真スタジオ」をご利用くださいませ(笑)。

[撮影]
photo by Junichi Takahashi

たかはしじゅんいち
写真家・立木義浩氏に師事。1989年よりニューヨークと東京を拠点に、広告・音楽・ファッション・アートの分野で活動。STOMPのオフィシャルフォトグラファーを10年以上担当し、2009年にはNews Week の「世界で尊敬される日本人100人」に選ばれる。現在は、アスリート、職人、日本酒作り、伝統芸能、芸術家が大好物な被写体。地域町おこし、障害、高齢者福祉などにも興味を持ち、フォトグラファーとしての関わり方を模索している。