アメリカのインターネット黎明期を支えた老舗プロバイダー、AOL(旧America Online)が、34年にわたって提供してきたダイヤルアップ接続サービスを、2025年9月30日に終了すると正式発表しました。これにより、AOL DialerやAOL Shield Browserなど関連ソフトウェアも同日で廃止され、インターネット史に残る一つの時代が幕を閉じます。

終焉の背景と顧客動向
•1991年の導入以来、モデム特有の耳鳴りのような接続音と「You’ve got mail」の通知音で親しまれたAOLのダイヤルアップですが、ブロードバンドや衛星回線の普及で利用者は急速に減少。2023年時点では、アメリカ国内での利用者はわずか1%未満にまで落ち込んでいました。  
•それでもなお、約16万人〜25万人が依然としてダイヤルアップを唯一の通信手段として利用し続けているという調査もあり、特に農村部や通信インフラの乏しい地域では“最後の砦”として機能していた現実が浮き彫りになっています。  

技術の移り変わりと郷愁
ダイヤルアップ接続の速度は最大で0.056 Mbpsに過ぎず、現在の典型的なファイバー回線500 Mbpsとは桁違いです。にもかかわらず、AOLの接続音や待機画面は、多くのユーザーの“ネット初体験”を演出した記憶として深く刻まれています。こうした“ノスタルジー”は、テクノロジーの進化だけでは消せない記憶の象徴とも言えるでしょう。 

AOLの現在と今後の展開
AOLは現在、Yahoo傘下でメールサービスやポータル機能を提供し続けていますが、かつての通信インフラに近い役割を果たすサービスは次々と消滅しています。以前終了したAIM、Internet Explorer、Skypeと続くこの流れは、「インターネット黎明期の象徴」が次々と姿を消していく時代の波を反映しています。

まとめ:「ネット初めの“音”が、ついに時代を締めくくる」
AOLのダイヤルアップ終了は、単なるサービス廃止以上の意味を持ちます。インターネット文化のルーツを支えた象徴的存在として、多くの人の記憶に残る“終章”なのです。
一方で、通信環境が整わない一部地域での影響も無視できず、移行支援や代替インフラの整備は今後の課題となるでしょう。

最後に、テクノロジーと共に成長してきた世代には、あの接続音が今もどこかで鳴っているような感覚も残っているはずです。時代の節目、そして“インターネット人類の歴史的瞬間”を見届ける一節として、今回の動きを振り返りたいと思います。