米国スタンフォード大学の研究者は、バーチャル・リアリティ(VR)が、ため込み症患者の「ため込まなければならない」という強迫観念を克服する手助けになる可能性を探った。これは、米国人口の約2.5%が罹患している症状で、新しい所有物を手に入れたいという執拗な衝動と、価値のあるなしにかかわらず物品を手放すことが極端に難しいという特徴があり、多くの場合、家の中が散らかり放題で不衛生な環境で暮らすことになる。

Journal of Psychiatric Research誌に掲載されたこの研究では、55歳以上の9人の溜め込み症が対象とした。研究者たちは彼らに、家の中で最も散らかっている部屋を写真やビデオで記録するよう依頼し、それをVRで使用するためにパーソナライズされた3D環境に変換した。実験中、参加者はVRヘッドセットとコントローラーを使って、このバーチャルな部屋をナビゲートし、自分の所有物を管理する練習をした。

VRセッションに加え、ボランティアは16週間のオンライングループセラピーを受け、そこでピアサポート(仲間同士の支え合い)を受け、ため込みに関する認知行動スキルを学んだ。VRセッションの間、彼らは特定のアイテムを仮想のリサイクル、寄付、ゴミ箱に入れるよう誘導され、現実での断捨離を検討するよう促された。
結果は、9人中7人が実験中に症状が軽減したと報告した。研究者たちは、8人の参加者の家の散らかり具合があまり目立たなかったと指摘。しかし、その改善はVRを使わずにグループセラピーだけを受けた対照グループと同程度であった。

参加者の中には、VR環境のリアルさについて懸念を示す者もいたが、研究者らは、この技術を改良することで、治療体験を向上させることができると考えている。本研究は、VRが高齢の患者を含む「ため込み性障害」の患者に好評であり、断捨離の課題に直面するのを助ける可能性があることを示している。

この革新的なアプローチは、複雑で困難な障害を抱える人々に有望な解決策を提供する可能性がある。助けを求めることに伴う偏見を減らし、より魅力的な方法でこの問題に取り組むことができる。