皆さんこんにちは。河上 純二 a.k.a JJです。
世界を変えるスタートアップ企業にフォーカスした最新レポートをお届けします。第41回目は、コンテンツ領域のブロックチェーンの社会実装に取り組む企業連合コンソーシアムである、一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアチブ(一般社団法人JCBI)代表理事の伊藤 佑介さんにお話を伺いました。
発足に至った当時の経緯
JCBIが発足された2020年、NFTという言葉は、まだ今のように世の中に広く認知されていませんでしたが、既に存在はしていました。そして当時の議論は、主にNFT自体のテクノロジー面にフォーカスされていました。
しかし一方で、NFTに紐付くコンテンツのクリエイターの権利保護や、NFTに紐付くコンテンツとファンとの関係構築など、コンテンツ業界にとって大切なクリエイターとファンにフォーカスした議論があまりありませんでした。
そのため、「テクノロジードリブンの議論だけでは、クリエイターが安心して自分のコンテンツを、ファンに安全に届けられるような環境整備が進まず、コンテンツ企業としてなかなかNFTの取り組みを推進するのが難しい」という声が聞こえてきました。
そこで、コンテンツのクリエイターとファンをよく理解しているコンテンツ関連企業の皆さんが一同に会して、互いにディスカッションしながら、一緒に新しい取り組みをトライアンドエラーできるような共創の場があれば、コンテンツ領域におけるブロックチェーンの社会実装が進むと考え、2020年2月に博報堂、朝日新聞社、小学館関係会社をはじめとしたコンテンツ関連企業の7社のみなさんとJCBIを発足しました。
これまでに行ってきた取り組みとそれに対する反響
発足当初は、NFTのようなBtoC領域ではなく、コンテンツ業界に存在している既存の業務課題の解決を図るようなBtoB領域でブロックチェーンを活用する取り組みを、加盟企業のみなさんと一緒に推進していました。
具体的には例えば、違法な著作権侵害サイトからの権利保護を支援するために、その侵害サイトの侵害情報を証拠としてブロックチェーン上に記録する取り組みや、今まで紙でやり取りしていたライセンス契約処理を信頼性を担保したまま効率化するために、ブロックチェーン上で許諾情報を管理する取り組みなどです。
そういった業界全体に資する活動を行っていく中で、結果として、コンテンツ業界に関わる様々なステークホルダーのみなさんと出会い、ご一緒に共創させていただけるようになりました。
まず、法曹界の弁護士のみなさんと、NFTと関わりの深い著作権等の知的財産権に関わる法制度についてご一緒に政策提言する活動をさせていただくようになりました。
次に、違法侵害サイト対策を啓蒙している文化庁さんや、日本コンテンツのグローバル流通を推進している経済産業省さんなどの官公庁のみなさんの委員会での議論に参加させていただけるようになりました。
さらに、政府与党の自民党ブロックチェーン議員連盟やNFT政策検討プロジェクトチームの先生方ともディスカッションさせていただく機会をいただき、自民党のNFT/Web3関連の政策提言書でJCBIの取り組みをご紹介いただけるようにもなりました。
現在JCBIとして推進している取り組み
JCBIは今、日本コンテンツのNFTを安心、安全にグローバルへ流通拡大できるようにするための環境整備に力を入れています。しかし、それを実現しようとする際、2つの課題が存在すると考えています。
まず1つは、ファンのUXに関わる課題です。
通常ファンはコンテンツを楽しむために、そのサービス利用料の他に、別途手数料を払うというようなことはしていません。しかし現状、ほとんどのブロックチェーンを使ったサービスでは、「ガス代」という手数料を仮想通貨で支払う必要があります。これではファンがコンテンツを楽しむUXが損なわれてしまいます。
もう1つは、クリエイターの権利に関わる課題です。
現行の日本の法律では、NFTを持つことで、得られる権利は何一つありません。NFTを持つとデータの所有権が得られるという話を聞くことがありますが、これは間違いで、民法で所有権というものは有体物にしか認められておらず、NFTのようなデータは無体物ですので、所有権はありません。ですので、NFTを持つことで認められるのは、NFTの取引に紐付く契約でクリエイターが許諾した内容だけです。つまり、NFTは契約の証左にしか過ぎません。ですが、現状のほとんどのブロックチェーンは、そのクリエイターが許諾した内容である契約情報を記載するだけの十分なデータの記録領域を持っていません。これでは、クリエイターは、NFTを介して許諾した内容を明確にすることができず、自分のコンテンツの権利を守ることができません。
JCBIは、この2つの課題の解決を図って、日本コンテンツのNFTを安心、安全にグローバルに届けられる環境を整備するための基盤として、日本発のパブリックブロックチェーン「Sanpō-Blockchain(サンポー・ブロックチェーン)を支援しています。
■プレスリリース:「自民党web3PTの中間提言におけるSanpō-Blockchainを活用したコンテンツに係る権利情報の記録を中心とする一般社団法人JCBIの取組みの取り上げ」
https://www.japan-contents-blockchain-initiative.org/information/2022-12-16
Sanpō-Blockchainは、ガス代と呼ばれるブロックチェーンの手数料がなく無償で安心して利用でき“生活者にとって良し”、許諾内容等の契約に関する情報がブロックチェーン上で安全に管理でき“権利者にとって良し”、膨大な電力を浪費して環境に負荷をかけるマイニングが不要で“社会にとって良し”、といった、江戸時代の近江商人が持っていた理念として日本固有の共創の考え方である「三方良し」を体現しているブロックチェーンです。
そのため、JCBIは“共創”という考えを共にするSanpō-Blockchainを、JCBIとして取り組んでいる、日本コンテンツのNFTを安心、安全にグローバルへ流通拡大するための環境整備の基盤として推奨しています。
「ブロックチェーンは共創を巻き起こす技術。企業を超えてユーザーがコンテンツを楽しめる新しい体験を実現するサービスを共創しましょう。」
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアチブ(一般社団法人JCBI)代表理事 / 株式会社博報堂 ビジネス開発局
伊藤 佑介
https://www.japan-contents-blockchain-initiative.org/
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