先週、Lenovoはワークステーション「ThinkStation」の新製品を3つ発表しました。主力製品はThinkStation PX(P10)で、非常に強力なパーツを組み合わせることが可能で、それにThinkStation P7とThinkStation P5が続きます。

“最大で120個”のCPUコア(2基の第4世代Xeonスケーラブルプロセッサ「Sapphire Rapids」)、2TBのRAM、そして4枚のグラフィックボード「NVIDIA RTX 6000 48GB」を搭載することができ、ワークステーションの新モデルの可能性を最もよく表しているThinkStation PXに注目してみましょう。その電力は、最大で2つの1800W電源から供給されます。

NVIDIAのプロフェッショナルビジュアライゼーション部門のヴァイスプレジデントを務めるBob Pette氏は、「NVIDIAは、デスクトップワークステーション向けとして世界で最もパワフルなグラフィックス処理を行うGPUを提供します」と述べています。この発言に対して異議を唱える人はいないでしょう。このレベルでは、AMDやIntel等の競合他社がいる中で、NVIDIAが頭一つ抜けています。

最大ストレージ容量は、7台のM.2ドライブ(28TB)と2台の3.5インチドライブ(24TB)を合わせて、合計52TBとなります。もちろん、一般的なRAID構築にも対応しています。内蔵された10Gbイーサネットアダプターを使用して、ネットワーク上でデータを素早く転送することが出来ます。従来の1GbアダプターとWi−Fi 6Eが、それを補完します。アンテナは筐体に組み込まれており、外部には出ていない点にはご注意下さい。

大型ゲーミングPC並のサイズに対して、非常に多くのハードウェアが詰め込まれています。しかし、これはどんなゲーマーが使用するコンピューターよりも遥かに強力で、それには正当な理由があります。このワークステーションは、シネマティックグラフィックスの制作やレンダリング等、ハイエンドのプロフェッショナルビジュアライゼーション処理で利用されます。

Lenovoのワークステーション担当のCSO(最高戦略責任者)であるJeff Wood氏が、新しいThinkStation3モデルを発表

LenovoがDreamWorksと提携して今回の新製品を発表したのは、それが理由です。DreamWorksは今後、クリエイティブスタッフにこれらのワークステーションを用意する予定です。あまり知られていませんが、Lenovoは、HPC(High Performance Computing)セクターで大ヒットしている液体冷却技術「Lenovo Neptune」を使用して、DreamWorksのレンダリングサーバー部門を既に強化しています。

筆者自身も、コンピューターグラフィックスの仕事をしてきたので、DreamWorksが作成するようなものに対して「十分な演算能力」というのは存在しないと断言出来ます。どちらかと言えば、そういったクリエイターは、利用可能な処理能力によって作業が制限されてしまいます。ご想像の通り、このようなハードウェアは可能な限り最大のハードウェア使用率で実行される運命にあり、体積あたりの計算量は信じられないほど莫大なため、次なる課題は間違いなくその冷却となります。

熱管理は、美学以外にもAston Martinがもたらす大きな付加価値の1つです。考えてみると、高性能な自動車は、エンジン、排気管、ブレーキ等、大量の熱を発生させます。今回の新型ワークステーションと同様に、その殆どは空冷式です。

LenovoとAston Martinの担当者によると、Aston Martinは、気流、熱管理、製品デザイン、製造、及び材料に関して、これらのコンピューターの製作に非常に有益となる豊富なノウハウと経験をもたらしました。そしてもちろん、製造しやすく、予算内で物を作る方法も彼らは知っています。

Aston Martinのパートナーシップ担当責任者を務めるCathal Lounghnane氏は、「我々は、過去110年間を自動車の熱制御のために費やしてきました」と話しており、ハイエンドな自動車とハイエンドなコンピューターの間にいくつか共通点があることを説明しています。

興味深いことに、Aston MartinもLenovoの顧客であり、新世代のThinkStationは現行のThinkStationを使って設計されています。

冷却システムは、ケース内の部品の配置と、出入りする気流の厳密な制御に依存する、綿密に設計及び調整された空気の流れに基づいています。

空気の取り入れ口の冷却板等に顕著な制御を見ることが出来ますが、気流のシミュレーションは、RAMモジュール間やCPU周辺の空気の流れなどの細かい部分にまで踏み込んで行われました。ハードウェアのプロトタイプが完成した後は、実際の測定によって、チームが予測したデジタルシミュレーションが厳密に検証されました。

今回のプロジェクトには使用されていないと考えられますが、確かに、それはNVIDIAがデジタルツインで推進しているシミュレーション主導の「デザインの未来」です。

デザイン(美学)は絶妙で、DBSのフロントグリルと同社のレッドカラーから、デザイン言語と物理的な特徴が触発されています。

ゲーミングPCのグリルは主にデザイン性のために設計されていますが、スポーツカーや最近のワークステーションにおいては、グリルが気流を安定させることで、高温な領域への空気の入り方にも大きな影響を与えます。気流が安定すればするほど、その後の制御が容易になります。ThinkStation 5Uの筐体は、複数台を購入して、ラックにコンピューターを積み重ねたいという要望にも応えられるように設計されています。

工具不要なケースデザインの美しさはご想像にお任せしますが、レンダリングよりも実物の方がゴージャスで高級感があるでしょう。

Lenovoのワークステーション及びクライアントAI部門のヴァイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるRob Herman氏に、「ゲーマー向けにケースだけ販売すれば、Lenovoは大儲けするでしょう」という冗談を言いましたが、面白いことに、公式のYoutubeに掲載した動画に寄せられた最初のコメントは「素晴らしいデザインのPCケース」というものでした。

DreamWorksは、クリエイティブな従業員がデスクトップコンピューターとして使用出来るように、これらのワークステーションを調達する予定です。それによって、高度な技術を持つ従業員が、レンダリングやアニメーションの計算を待つ時間が(可能な限り)減らされるため、このような高性能コンピューターがあることで生産性が大幅に向上します。

ただし、従業員がワークステーションを使用していない時には、ネットワークを介して「レンダリングファーム」内の他のワークステーションと演算処理能力を組み合わせることが可能です。これにより、DreamWorksはハードウェアを最大限に活用し、投資を回収出来るはずです。

Lenovo ThinkStation P7及びP5は、新しいThinkStationシリーズのより小型でコンパクトなモデルであり、それほどオーバースペックなワークステーションは必要無いという多くのニーズをカバーします。ただし、同じデザイン言語で設計されており、非常に有能なシステムであることには違いありません。

完全な仕様を確認することも出来ますが、大まかに言うと、ThinkStation P7はPXの最大65%相当、P5はP7の最大65%相当の処理能力を備えています。

どのモデルも、最大の生産性、回復力、将来の保証(適切な拡張オプション)という同じ目標を、異なる価格帯・サイズで追求しています。

これらのワークステーションは5月に発売予定で、既存のモデルの一部と置き換えられる可能性があります。現時点では、Lenovoから正式な価格は発表されていません。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

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