季節はまさに冬。冬至も終わって、これからは昼間が少しずつ長くなっていくとはいえ、冬の夜は長いもの。そんな時期に花を添えるのがイルミネーションです。

以前は「クリスマスまで」という印象でしたが、最近は2月くらいまで…というか、「寒い間はずっとやってる」というところもちらほら。人肌恋しい、ちょっと寂しくなりがちな季節に、イルミネーションの灯りは心を明るくしてくれます。

…なになに? イルミネーションなんて見に行く機会ないって?

そんなことはありません! この数ヶ月でスマートフォンカメラでの撮影に慣れたあなたなら、きっとお誘いもしたりされたりする!…はず!

「やっぱ冬といえばイルミネーションだよね!インスタとかいいねもいっぱいつきそうだし!」

ということで、今回もかわゆいあの子に、撮影を頼まれるというシチュエーションで、「イルミネーションでの撮影テクニック」を紹介していきたいと思います。

光と闇を支配せよ!

夜のキラキライルミネーションは、以前に指南した「夏の夜祭り」と似た撮影環境です。ただ、明るさがとにかく違います。圧倒的にイルミネーションは明るいのです。なんせそこらじゅうがピカピカ光っているわけですから、どこで撮るかも迷いどころ。

ここで重要なるのが「どうすれば顔面に光を当てられるか」。

SNSに投稿するあの子が、キラキラの中にいる私!を演出するためには、背景にイルミネーション必須なわけですが…。

完全に逆光

はい、真っ暗です。闇の人ですね、私。木のイルミネーションを背景に入れようとして、見事に人物がシルエット化しています。あえて横顔などでシルエットを撮りたいのでなければ、これはもう何が撮りたいのか、何がしたかったのかわかりません。

逆光・フラッシュあり

わずかな希望をもってフラッシュを焚いたのがこちら。気持ち、ほんの気持ちマシになりました。しかし、やはり全身を写そうとカメラを引いた状態では、フラッシュの光が遠すぎます。どうしてもぼんやりとした印象です。

光源の方を向く

今度は、“木の前”というポジションはそのまま、横に配置されていた足下ライトのほうへ顔を向けました。いかがでしょう。自然な感じで明るくなりましたよね。

こうして比べてしまうと、スマホのフラッシュは光が弱いこと、よく分かります。

しかし、バストアップならば距離が近くなるので、スマホのフラッシュもきちんと効果を発揮します。

完全に逆光
逆光にフラッシュ

後ろの方まで光が届かないということが良い方向に働いて、背景にあるイルミネーションの光はそのままに、顔面を明るく写せました。続いてはこんなシチュエーション。

下からの光(通称:お化けライト)

こちらも一見悪くないのですが、下に電球があるため、いわゆる「お化けライト」という状態になっています。脱線しますけど、“お化けライト”って、昔、テレビで幽霊的なものが出てくる時に、下から光をあてる演出が多かった…ということから来ている言葉なのでしょうか。懐中電灯を顎の下から照らして「お化けだぞ?!」みたいな。しかし本当の由来は謎。誰か教えて!

…本題に戻りましょう。

こうなると、余計な影が増えてしまって、なんだか不自然な印象に。とにかく大事なのは、顔全体に光が当たるような位置を探すことです。ちょっと整理しましょう。今回の作例は、なんていうことのない良くある風景で撮影したものですが、そのなかで意識して利用したものが2つあります。

そう、背景にいれる木(幹まで電球が施してあるので、背後にイルミネーション感を出しやすい)と、その横にある足下を照らす照明です。その上で、顔面をどこに向けるか。ただそれだけを意識した結果が、この差になるのです。

モデル位置はほぼ同じ。木を中心に、撮影者が45度移動しただけ。それでここまで変わるのだから、ある意味撮影は面白くて怖いですね。

イルミネーション撮影でストロボやレフ板などの機材が使えない場合、被写体を挟んで前後に光があるところを探すこと、おすすめします。

場所を決めたら顔の影を見ながら微調整しましょう。寒い中、「どこにしよう…」とうろうろしたり、何回も撮り直すのはお互いにとって過酷だし、不仲の元。健康のためにも、短時間でバッチリとキメたいものです。

コートの色にも気を付けて!

ただ、気を付けたいことは他にもあります。近年のスマートフォンカメラの良いところでもあり悪いところでもあるのですが、頼んでないのにコントラストをつけてくれるんですよね。勝手に。

おかげでシミ・シワやクマがくっきりと写ってしまう…。さらには、衣類の色まで顔面に影響してしまうのです! スマホにかぎらず、デジカメの「カメラお任せモード」などで撮影すると起こりやすい現象といえます。

具体的に説明しましょう。これは、同じ環境でコートの色を変えて撮った3枚の作例です。

光源のほうを向いて黒い服
光源のほうを向いて赤い服
光源のほうを向いて白い服

見比べてみると、「アレ?」と思いませんか。もちろん、同じ日の同じ場所で撮影したものですから、メイクは変えていません。それなのに、白いコートだけ顔面が暗く見えますよね。これは、スマートフォンが勝手に判断して、白いコートを活かしてくれているのです。活かしてというか、余計なことをしてくれているというのが正しいのですが。

さらにヘアカラーがダークな場合は、薄い色のコートだと首から上が暗く沈んでしまうこともあるので、「なんだかうまく撮れないな」と悩む前に、なんとなく「そういうことが起こるのか」と覚えておくのがいいでしょう。

イルミネーションも近年さまざまな色で点灯しますが、一番登場する暖色系の電球だと、赤やブラウンなどのコートであれば、うまくはまるかもしれません。

もし、「有名なイルミネーションスポットへわざわざ撮影に行く」というようなシチュエーションなのであれば、電球の色を事前に調べて、被写体になるかわゆいあの子へ伝えておくといいでしょう。写真写りを気にしまくりな“あの子”にとっては、間違いなくうれしい情報です。一歩親しくなるきっかけになるかもしれませんよ。

そして、今回の写真も顔面は歪みのない画面中心付近に配置し、バストアップは上から撮影。目を大きく、立ち姿は下から足長に…。スマホカメラの特性を生かして、盛れた写真が撮れました。

写真をお気に召したあの子は、早速アプリで加工(iPhone純正アプリにて色加工、B612でほうれい線&キラ目&涙袋を加工)してInstagramにアップ! 寒い中の撮影で、わがままに応じてよく頑張ったあなた。来年はきっといいことあるでしょう!

テレジア先生への公開質問

よく撮影会に行きますが、モデルさんにデータを送っても、全然写真を使ってくれません。自分のSNSには「どうぞ載せてください」と言われるけど、実際載せてもいいね少ないし、タグをつけて載せても拡散してもらえないし…。どうしたら使ってもらえるような、上手い写真を撮れるようになりますか?(50代男性)

ぐぐぐ…。大変答えにくい相談がきてしまいました…。しかし相談者さんが「上手い写真を撮れるようになりますか?」と聞いてくださっているのが救いですね。

そのモデルさんがなぜ載せないのかは、詳しくわかりかねますが、間違いないのは「とにかく気に入ってない」ということです(バッサリ)。

その理由を予想していきましょう。

①撮影テクニックの連載でも述べている通りで、スタイルが悪く見えたり、ほうれい線やシミ、シワが目立つ写真になっている。
②そのモデルさんが、SNS上で“ブランディング”している世界観にあっていない。

大きく分けて、おそらくこの二つがその理由になるのではと思います。

①に関していうと、人によっては「自分で修正してSNSに使う」という人も多いです。自分の顔面やスタイルにおいて、気になる場所は千差万別。ただ、ほうれい線やシワなどは、大体の人が気にするものかと思います。ほくろがすごく多いからと一つ一つ消したり、傷やアザを消して欲しいなど、人によって気になるこだわりがあるのは当然のことでしょう。

あとは自分的に気に入らない表情をしている…など、撮影者から見たら「全部可愛いのに」と思えてしまうような些細な部分でも、モデルさんたちには細かいこだわりもありがちです。そのこだわりを、彼女がSNSへ投稿している写真から、あなたが感じて、理解するしかありません。

一方で、②はさらにわかりにくいですよね。

いまや、事務所に所属せず、フリーでSNSを中心に活動をしている被写体さんが多い世の中。彼女たちには、彼女たちなりの“ブランド戦略”というものがあります。わかりやすくいうと、その人にとって「見られたい自分」と「見られたくない自分」があるのです。

そうした戦略は、今後その人が自分のやりたい仕事を獲得していくために、とても大事なものであったりします。まじめにそういう時代になりましたね。SNSにあげる写真の1つ1つ、投稿の1つ1つが、重要な宣材なのです。

私自身で例えるならば、「長身・美脚・大人顔・クール・ゴージャス…というふうに見てほしいな!」という気持ちで、せっせと写真を出しています。そんな私が、カメラマンさんのオーダーで女子高生の制服を着たとしましょう。その写真を後日貰ったとしても…。SNSには載せないと思います。「あなたの思い出にしてください」という気持ちです。

写真の出来栄えは関係ありません。女子高生コスプレの写真をネットにあげるメリットが、私にはないという、ただそれだけの話です。

例えばこれが、教師や女医のコスプレだったとします(この連載がまさにそんな感じですが)。写真の出来栄えが素晴らしかったら、私は喜んでSNSに投稿するでしょう。万が一ですけど、その写真を見た白衣メーカーの方から、モデルの依頼があるかもしれません。

実際、そうした流れから、先生風のモデル依頼が来たこともあります。こうした“自分ブランディング”は、私たちモデルにとって、大事な仕事の1つなのです。

そんな志向性の私が、女子高生コスプレをしている写真を見られたら…。百害あって一利なし。何のメリットもありません。親しい間柄の方なら、「いやー無理があるねw」とネタにして盛り上がってくれるかもしれませんが、それをSNSにアップしてほしいと希望されたら、ひたすら困ってしまうだけ。

Twitter、Instagram etc. SNSにアップされている写真は、そのままそのモデルさんの個性であり、宣材写真として見られてしまいます。そういう意識がモデル側にある…という理解を持ったうえで、「その写真、自分のアカウントになら載せてもらってもいいですよ」とモデルさんが言ってくれているのであれば、それはかなり、かなりの優しさでし。もうすっごい優しいなって思う。私なんて、なんだかもう涙が出そうです。

…ところで。、気になったのは、「いいねが少ない」というところ。あなたは、

①写真がうまくなりたい
②いいねがほしい

のどちらでしょうか。残念ながら、「うまい写真だからいいねが増える」わけではありません。プロカメラマンですら、自分が撮りたい写真と目を惹く(いいね、をたくさんもらえそうな)写真を、心の中で分けて撮っている人は多いと聞きます。

「いいね」って、「うまいね」じゃないのです。

SNSの「いいね」には、いろんな意味が込められています。わかりやすく言うなら、素晴らしい夕焼けの写真よりも、パンティが見えてるものの方が、はるかにいいねは多くなる。これはもう仕方ないです。

たった一回、その時間は2度と来ないからと長時間粘って望遠で撮影した、それはそれは見事な夕焼け写真でも、スナップ感満載のパンチラ写真に叶わない。もちろん、素晴らしいライティングのパンチラもこの世には存在しますけどね。それはそれで、昨今のSNSでは最強ですけどね。

さらに言えば、「うまい」の基準も、人によって判断がバラバラです。機材を揃えて難しい撮影をこなすことがうまいのかと言われたら、疑問も残ります。

いわゆる、“センス”というものがそこには入るので、ピントがすごく合っているということや、たくさんの機材を使いこなせるというのとは、また別の価値観が存在します。女性は概して、“センス”に弱いもの。「ぶれてるけど、なんだか臨場感があって素敵!」となったりしがちです。

以前、プロカメラマンのセミナーを受けに、美容学生が参加しているところに居合わせました。私はそのときモデルだったのですが、「カメラが趣味です」という他の受講生とは、全く違った価値観だったのを覚えています。

技術的なことは先生がいるのでフォローしてもらいつつ、大胆なトリミング、ライティングをしていて、まるで雑誌の撮影のようでした。

やはり美容学生さんというだけあって、ファッション誌や海外の雑誌などを見て自分の引き出しの中で“センス”が出来上がっていたのだろうと思います。

さて、相談者さんが欲しいのは

①たくさんのいいね
②技術、センスの向上

どちらでしょうか。
まずはそのあたりを整理して、ご自身が撮りたい写真を整理して考えてみてはいかがでしょうか。

そうすれば、どこに発表したいのか、誰に求められたいのかも、自ずと整理されて、もしかしたらモデルさんに写真を使ってもらえない、という悩みは消えてしまうかもしれません。

答えは己の中にある…なのです。

※老若男女問わず、撮影に関する人間関係のお悩みを随時募集! 写真が好き、撮影会が好きな皆さん。ここはあなたの心の保健室。個人が特定できないように配慮いたしますので、私のTwitterアカウント(https://twitter.com/red_theresia)にDMで気軽に質問ください。

テレジア
京都市立芸術大学 デザイン科卒。モデル兼コスプレーヤー、レタッチャー、たまにウォーキング講師。元準ミス日本。デザイン・アートの造詣と、プロモデルとしての現場経験を兼ね備え、ライティングや人体構造、色彩設計などを考慮したレタッチを得意とする。高校美術工芸教職免許を持ち、非常勤講師経験あり。