ドイツ・ボン大学の研究チームが、魚のエラ構造をヒントにした革新的な洗濯用フィルターを開発し、家庭から流出するマイクロプラスチック汚染の抑制に向けて大きな期待を集めている。洗濯時に衣類から剥がれ落ちる合成繊維は、目に見えにくいものの環境に深刻な影響を及ぼす。現在主流のカートリッジ型フィルターは目詰まりしやすく、効率が落ちることが課題だった。今回の新フィルターは、魚のエラが水流を利用して微細な粒子を効果的に分離する仕組みを参考にし、繊維がフィルター表面に張り付かず流動し続けることで高い捕集性能を維持するよう設計されている。

研究チームが実施した実験では、2mmの標準化された合成繊維を使った制御環境で、99%以上の捕集率を確認。これは実験室内の理想条件で得られた数値ではあるものの、洗濯機メーカーが注目するには十分な性能だとされる。繊維はフィルター内部の流れに乗って小さな集中排出口へ移動し、そこで凝縮されて回収されるため、従来の平面フィルターに比べて目詰まりの発生が大幅に遅れる設計だ。

実機への組み込みはまだだが、サイズや流量など洗濯機の仕様を前提に設計されており、今後は実際の洗濯排水でのテストが求められる。実際の家庭の排水には、髪の毛、ホコリ、天然繊維、洗剤残渣などさまざまな物質が混ざっており、標準化された繊維とは挙動が大きく異なるためだ。

それでも期待が高まる背景として、フランスが2025年以降の新型洗濯機へのマイクロファイバーフィルター搭載を義務化するなど、各国が規制強化を進めている点が挙げられる。年間で4人家族から最大500gもの合成繊維が排出されるというデータもあり、下水処理場で処理しきれなかった繊維が農地に拡散している現状を考えると、源流での対策が最も効率的だ。

研究チームは、家電メーカーと連携し筐体設計、自動クリーニング、耐久試験などを進めれば、1〜2年で市場投入が現実的になると述べている。今後の実証結果次第では、ユーザーの負担を増やさずにマイクロプラスチック問題に貢献できる有力な解決策として普及する可能性が高い。