テスラの一部モデルに搭載されている中国製バッテリーの信頼性に、改めて疑問が投げかけられている。問題となっているのは、Model 3およびModel Yに採用されるLGエナジーソリューション製のNCM811リチウムイオン電池だ。EV修理専門企業のEV Clinicが新たに実施した技術検証によると、同バッテリーは耐久性および修理性の面で、パナソニック製のNCAバッテリーと比べて大きな差があるという。

テスト結果では、LG製NCM811バッテリーの寿命は約24万kmと推定される一方、パナソニック製NCAは40万kmに達し、ほぼ2倍の耐久性を示した。さらに深刻なのが修理難易度の高さだ。EV Clinicの技術者は、LG製バッテリーの修理において90%を超える失敗率を記録し、個別セルの交換も「実質不可能」と評価している。原因として、複数モジュール間で均一に劣化が進む特性が挙げられ、一つのセルが故障するとモジュール全体が性能低下するため、部分修理が成立しない構造になっているという。

こうした状況を受け、EV ClinicはLGバッテリー搭載車の修理依頼に対し「修理可能性評価料」を新たに追加課金する措置を開始。これは、修理失敗の際に企業側が被る損失を軽減するためのもので、現場のリスクの高さを反映した対応といえる。

同社はオーナーへの推奨策として、①パナソニック製バッテリーへの交換、②テスラへ直接連絡してバッテリー全体の交換を依頼する、の2つの選択肢を提示している。一方でテスラは、今回の指摘に対して現時点で公式なコメントを出していない。

EVの普及が進む中、バッテリーは車両価値を左右する最重要コンポーネントである。今回の報告は“航続距離”だけでなく、“長期的な修理性・耐久性”を重視したEV選びの重要性を改めて浮き彫りにしている。企業もユーザーも、今後ますますバッテリー品質に対する透明性を求めていくことになりそうだ。