ゴキブリは不快害虫として知られるが、北カロライナ州立大学が発表した最新研究により、彼らが室内空気そのものを汚染していることが明確になった。研究チームは、ロサンゼルスの集合住宅を対象に、ゴキブリ数と室内の空中アレルゲン量、細菌由来のエンドトキシン濃度との関連性を調査。その結果、ゴキブリが多く生息する住居ほど、これら2つの汚染物質が顕著に高いレベルで検出された。

特に注目されるのは、German cockroach(チャバネゴキブリ)の存在。研究では、メスのゴキブリがオスの2倍以上のエンドトキシンを排出していることが明らかになった。エンドトキシンは細菌の細胞壁が分解された際の残留物で、乾燥した糞とともに空気中へ舞い上がりやすい。これが肺を刺激し、喘息やアレルギー反応を悪化させる要因となる。
調査結果は、数値面でも深刻だ。ゴキブリが大量発生していた住居では、1日あたり平均47匹がトラップにかかり、キッチンのホコリからは177 endotoxin units/mgが検出された。これは、ゴキブリのいない家庭に比べ約2倍の数値だ。また、代表的アレルゲンである「Bla g 2」も大幅に上昇していた。一方で、比較的汚染度が低かったのは寝室で、キッチンが汚染の中心地であることが裏付けられた。
興味深いのは、駆除介入が即効性を示した点だ。プロの害虫駆除により住戸内のゴキブリが激減すると、アレルゲンとエンドトキシンの値も急速に低下。対照的に、駆除を行わなかった家庭では、ゴキブリ数・汚染レベルともに横ばい状態が続いた。
研究者らは、ゴキブリが単なる「不潔の象徴」ではなく、室内空気質を根本から悪化させる公衆衛生上のリスクであると指摘。特に換気が悪く湿度の高い住居環境ではリスクが増し、喘息持ちの住民や子ども、高齢者にとっての負担も大きい。今後は動物モデルを用いた詳細な健康影響の研究が進められる予定だが、現時点でも結論は明確だ。
「ゴキブリを減らすことは、空気をきれいにすることに直結する」。






















