クラシックなレンジファインダーの美学を保ちながら、リアルタイム露出プレビューや高精細EVFを搭載した「Leica M EV1」が正式発表。ライカが“光学の伝統”から“デジタルの精密さ”へと踏み出した新章を象徴する一台だ。

ライカは2025年10月、オランダで「Leica M EV1」を正式発表した。これは同社の象徴的なMシリーズとしては初めて、電子ビューファインダー(EVF)を本体に内蔵したモデルであり、伝統的なレンジファインダー機構から一歩進んだ革新的な進化を遂げている。

M EV1の最大の特徴は、5.76メガピクセルの高精細EVFとリアルタイム露出プレビュー機能だ。ISO、絞り、シャッター速度などの設定に基づき、撮影結果を事前に正確に確認できる。特に大口径レンズ「Summilux」や「Noctilux」シリーズなど、浅い被写界深度を扱う撮影において、その精度が大きく発揮される。また、EVFは自然な色再現と高いコントラストを備え、周囲の情報表示や自動切り替え式アイセンサー、視度調整ダイヤルも搭載。従来の光学的な撮影体験を保ちながら、現代的な利便性を融合させた。

さらに、マニュアルフォーカスを補助する「フォーカスピーキング」や「1.8倍デジタルズーム」機能も搭載。従来はブライトフレーム切り替えに使われていた前面レバーが、これらのデジタルアシスト機能を呼び出すスイッチとして新たな役割を担う。操作性の洗練とデジタル時代への適応が、Mシリーズらしい合理的なデザインで実現されている。

心臓部にはフルサイズBSI-CMOSセンサーを採用し、「トリプル・レゾリューション・テクノロジー」により60、36、18メガピクセルの3段階から画素数を選択可能。画像処理には「Maestro III」エンジンを搭載し、高速かつ高精細な描写を実現する。64GBの内蔵メモリとSDカードスロットを備え、DNGおよびJPEG形式に対応。Bluetooth・Wi-Fi・USB接続を通じて、Leica FOTOSアプリとの連携や「Content Credentials」による画像の真正性保証もサポートする。

価格はオランダで€7,950(約8,400ドル)で、発売日は2025年10月23日。販売はアムステルダムとリッセのライカストアおよび正規販売店で開始される。オプションとして、約€395(約420ドル)のレザーストラップも用意。北米での価格は未定だ。

伝統のMシリーズにおけるEVF内蔵という大きな転換点を迎えたM EV1。レンジファインダーの精神を継承しつつ、現代のクリエイティブニーズに応える“次世代のクラシック”として、ライカの新たな歴史を刻むモデルとなるだろう。