Tellyという新興企業は、データ収益化とパーソナライズされた広告に依存する、よくある無料または安価なストリーミングサービスの代わりとして、無料のテレビを提供することを計画しています。

Ilya Pozin氏(Pluto TVの創設者)が率いるTellyは、数百万台の55インチのデュアルスクリーン4Kスマートテレビを米国全土の家庭に完全無料で提供することを目指しています。最初の50万台のテレビはTellyに登録した人に今夏に出荷される予定で、それ以降の注文は2024年に出荷される予定です。

物凄い反響で、最初の36時間以内に10万件以上の登録がありました。特に、Z世代やミレニアル世代を含む若い成人世代が登録者の3分の2を占めているそうです。ただし、これらのテレビを入手するには重要な条件があり、興味のあるユーザーは、相当な量の機密データを提供することに同意する必要があります。

このサービスは無料でテレビを提供することを目的としていますが、それと引き換えに個人情報の提供を要求しています(画像: Telly TV)

Tellyの無料テレビは、素晴らしい仕様となっています。1,000ドル相当のこのスマートTVは、人工知能(AI)、音声コントロール、モーションセンサー機能を備えています。また、高解像度カメラやドライバー5基のサウンドバーが含まれており、上部のディスプレイは従来のテレビですが、パーソナライズされた広告を表示する小さなディスプレイが分離されて下部に配置されています。

メインディスプレイの使用中に、小さい画面をモバイルアプリと同期することも可能です。完全にオフにすることも出来ますが、メイン画面がアクティブな時はオンにしておく必要があります。Tellyは、カメラにはプライバシーシャッターが付いており、ビデオ会議やモーショントラッキングアプリ、ゲーム等の特定のアプリケーションにのみ使用されることをユーザーに保証しています。

とはいえ、落とし穴はあります。テクノロジー関連でよく言われる「if the product is free, you’re the product.(商品が無料なら、あなた自身が売り物となる)」という概念を、Tellyの広告付きテレビは体現しています。無料でテレビを受け取るためには、ユーザーは事前に広範な個人情報を提供する必要があります。氏名、住所、メールアドレス、電場番号等の基本情報に加えて、ユーザーは5分間のアンケートに回答する必要があり、好みのブランド、買い物習慣、世帯人数、収入等に関するデータが収集されます。

1,000ドル相当のこのスマートTVは、AI、ボイスコントロール、モーションセンサー機能を備えています

さらに、利用規約には、ユーザーがテレビを使用するにはクレジットカードを登録する必要があると記載されています。ユーザーが特定の広告を無効にしようとしたり、テレビをWi-Fiから長期間切断しようとしたりしてこれらの規約に違反した場合、Tellyにはテレビの返却を要求する権利が発生し、従わない場合にはユーザーはクレジットカードに料金を請求される可能性があります。

テレビが不要になった場合、ユーザーは単純にテレビを処分したり譲渡したりすることは出来ないという点には注意が必要です。テレビ本体はTellyに返却する必要があり、返さないと追加料金が発生する可能性があります。利用規約に違反し、テレビを返却しなかった場合の正確な金額は明らかにされておりません。

Tellyのビジネスモデルには懸念も


こうしたデータ収集の慣行は、消費者やプライバシー専門家の間で懸念を引き起こしています。批評家は、Tellyによる広範なデータ収集は、例えユーザーの同意があったとしても予期せぬ結果をもたらす可能性がある、と主張しています。18歳未満には応募資格がありませんが、テレビを設置している家庭では子供への影響を懸念する声も挙がっています

TellyのCSO(最高戦略責任者)を務めるDallas Lawrence氏は、データ収集のレベルは認めていますが、会社の透明性を強調しています。同氏は、通常のスマートTVは明示的な同意無しに同様のデータを収集しているのに対し、Tellyは無料のデバイスと引き換えにデータ収集を行っていると素直に説明しています。

Lawrence氏は、ユーザーには選択肢があり、自分の情報を提供することに抵抗がある場合はTellyを受け取らないという選択も可能だ、と述べています。その一方で、情報を共有することに同意した人には、1,000ドル相当の高価なテレビが提供されることになります。

Tellyが実施するスマートTVの無償提供は魅力的ですが、ユーザーはプライバシーへの影響を慎重に考慮し、テレビの価値とデータ共有の潜在的リスクを比較検討する必要があります。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

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