Innovative Technology Show(ITS)の第23回大会が、昨年と同様ソウルの江南地区で開催されました。Ubergizmoは、今年もITS Awardsの審査員でした。「K-Innovation Company」賞のファイナリストのプレゼンテーションとその内容を慎重に検討し、評価しました。
ITS 2022は、中小企業・新興企業省のYoung Lee大臣によるウェルカムスピーチで開幕されました。今年のテーマは、「Tech-Innovation, Talk to the Future!」です。
240社の中から10社が決勝に進出するなど、熾烈な競争が繰り広げられ、様々な業界で使用されている製品と技術のレベルの高さに感動しました。
Ubergizmoは、革新性、世界への輸出能力、価値提案を基に、Everchemtech、SHENB、NES&TEC Co.,Ltd.の3社を「Best of ITS 2022」としてノミネートしました。
Everchemtech
Everchemtechは、電子機器の絶縁等、通常は工業目的で使用される様々な材料で作られたフィルムを開発する会社です。しかし、食に関わるものだからこそ、全ての消費者に届く新しい製品「NEXRIER」を思いつきました。
NEXRIERはNEXt barRIERの略称で、食品業界で使用されるプラスチックの代替品となる生分解性製品です。同社が目指すのは、食品と酸素との接触を防ぐことであり、従来のプラスチック包装に代わる一時的な包装容器の選択肢となる可能性があります。
水分や食品と接触してもすぐに分解しない生分解性プラスチックを作ることは、通常は非常に困難です。Everchemtechは、それを上手く解決することが出来たと述べており、その製品は最終的に生分解するが、食品の保存期間中は安定しているそうです。
さらに、同社は、このNEXRIERを従来のエチレンビニルアルコール(EVOH)系列と同等のプラスチックよりも30〜40%安価に製造出来ると説明しています。私達が知る限り、これはこの業界における石油使用量の大幅かつ経済的に持続可能な削減に繋がる可能性のある大きなブレークスルーです。
驚くことに、NEXRIERの基本成分は、通常はチーズの製造によって生まれる副産物であるホエイプロテインとなっています。EverchemtechのNEXRIERは、優秀賞の1つを受賞しました。
SHENB
SHENBは、マイクロニードルデバイス「VIRTUE RF」を製品化している医療機器メーカーです。
マイクロニードリングは、人々の皮膚を若返らせたり、治癒したりするために、化粧品業界で一般的に利用されている医療処置です。例えば、ニキビ、脱毛、傷跡、日焼けによるダメージ、皺等の治療に使用されています。
マイクロニードリングとは、小さな針で皮膚を刺すことで(皮膚の損傷は最低限に抑えられています)、より多くのコラーゲンとエラスチンを生成することによって、その領域を治癒(再構築)させるという原理に基づいて機能します。治癒した部分の皮膚は見た目が良くなる可能性がありますが、リスクが無いわけではなく、専門家は当局の規制に従って手順を実行する必要があります。
SHENBは、針に加えてRF(高周波)技術を使用しているため、「VIRTUE RF」という製品名が付けられています。RFは熱に変わり、皮膚層の奥深くまで届くため、より多くの制御と治療オプションが得られます。ほとんどの人は気付いていませんが、人間の皮膚には3つの異なる層が存在しています。
他のメーカーもRFを使用していますが、SHENBの目新しさはいくつかの機能に由来しています。まず、ACS(高度な冷却システム)が搭載されており、RFエネルギーがその役目を終えるとすぐに肌を冷やします。これにより、熱傷のリスクを回避しながら、より多くのエネルギーを使用する(より深く到達する)ことが可能になります。
次に、IPRS(Integrated Pulsed Radiofrequency System)がより優れたエネルギーパルス制御を可能にし「より広い領域の肌を若返らす」ことに繋がります。最後に、このデバイスは複数の周波数(0.5〜2MHz)で動作し、最大7秒間安全にエネルギーを供給することが出来ます(従来は最大で0.8秒)。
どうやら、VIRTUE RFは既に米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)とヨーロッパの同等の機関によって承認されており、SHENBは2024年に投入予定の改良品にも既に取り組んでいるようです。SHENBも、ITS 2022の優秀賞を受賞しています。
NES&TEC
NES&TEC Co., Ltd.は、複数の利用用途の可能性を秘めたSWIDドローン(業界用語では、マルチコプターUAVシステム)を売り込んでいました。インフラストラクチャを監視するための産業用ドローンとして、または森林火災の際に消防署が使用するために必要な全てを備えています。
ただし、ジャミングに耐えられるように構築されており、従来の即位システム(GPS等)が使用出来ない場合でも操縦することが出来るため、強力な軍事的可能性も秘めています。
ハッカーを阻止するために、NES&TECは独自の飛行制御システムを実装しています。プロプライエタリコードとオープンソースコードの安全性レベルについて議論することに出来ますが、韓国軍は既存のオープンソース通信システムを禁止しているため、同社には選択の余地はありませんでした。このドローンで使用されているものは、韓国軍が規定するレベルの暗号化規格(KCMVP)に準拠しています。
NEX&TECは、米国とヨーロッパでもセキュリティ認証を取得していますが、どの認証についても詳細は明らかにされていません。同社は、ドローンはジャミングに耐性があり、GPSから遮断されても操縦出来るとだけ説明しています。このドローンにはカメラベースの測位システムが採用されているので、それが可能となっています。
最近の軍事開発を考えると、無人偵察機は非常に価値のある偵察ツールであることが証明されているため、この機能は世界中の治安部隊の注目を集める可能性があります。
その他のファイナリスト
ファイナリストに選出されたその他の企業を以下に記載していますが、その殆どが同様に優れた内容で、注目に値します。
JPS: ITS 2022 大賞受賞 (鋼材包装用電気バンド)
Kanavi Mobility: スキャニングLiDARセンサー製品
IntelliVIX: ディープラーニングベースの監視カメラ映像分析
Jijun System: 駐車場総合管理システム
Secuworks: 音場セキュリティセンサー
Ison: ドローンチャージングステーション
P&S Technology: 食品及びペットボトル飲料向け欠陥検査装置
この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。
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