8~10年前、メカニカルキーボードは比較的ニッチな趣味で、生産に積極的なメーカーも多くはありませんでした。しかし現在、Razer、Corsair、Steel Series、Logitechといった主要なメーカーがメカニカルキーボードを生産しています。

これらのメーカー品は大変かっこいいのですが、それでも私達はより良いものを求めていて、あなたがこの記事を読んでいるのもそれが理由でしょう。もしあなたがカスタムメカニカルキーボードの(時には高価になる)世界に足を踏み入れたいなら、このガイド記事が道しるべになれば幸いです。

メカニカルキーボードはどうやって作る?

さて、メカニカルキーボードを作るプロセスにはいろいろな考えるべき要素があり、複雑です。しかし、全体的なプロセスをシンプルにすると、製作には5つの部品が必要になるといえます。

ケース:キーボードのサイズとフォームファクターを決めます。

PCB:キーボードの“心臓”です。PCBの多くはプログラマブルで、つまりユーザーの好みに合わせてキーの配置をリマップできます。(編注:基板だけでなくICまでを含めて言及していると思われます)

キーキャップ:とてもバラエティに富んだ製品が出てきて、キーボードを製作する上で最も楽しい過程の一つです。

スイッチ:キーボードの“感触”を決めます。クリッキーやタクタイル、リニアという種類があり、中にはサイレント(静音)のオプションがあるモデルも。職場など他の人がいる中で使う際にはサイレントモデルを選ぶといいかもしれません。

スタビライザー:シフトキー、スペースバー、エンターキーといった長いキーに使います。こういったキーの入力を安定させるためのものです。

プレート(オプショナル):これがなくてもキーボードは製作できるので、オプション的なものです。しかし、プレートを用いることで安定性が増し、打鍵時にフィーリングや音も変わります。しかしビギナーにとっては100%必要なものではなく、この“沼”により深く入っていきたいなら検討してもいい、といったものです。

キーボードケース

カスタムメカニカルキーボードにおいて、選べるキーボードケースは多種多様です。実際、多くのカスタムメカニカルキーボードはいわゆるフルサイズのキーボードとは違った形をしています。r/MechanicalKeyboardsのスレッドを見れば、フルサイズのキーボードはむしろマイノリティで、多くはそれ以外のレイアウトのキーボードについて会話されている様子が分かるでしょう。

フルサイズキーボード……多くの人が知っていてなじみあるキーボードがこれです。全ての英数字キー、ナビゲーションキー、ファンクションキー、方向キー、テンキーを備えています。

TKL……TKLというフォームファクターはフルサイズのレイアウトに比べてカスタムメカニカルキーボードの中ではやや人気なモデルになります。フルサイズからテンキーを抜いたモデルで、テンキーを必要とする人たちはTKLの他に独立したカスタムテンキーキーボードを作っています。

75%……75%が意味するのは、フルサイズのキーボードに比べて大体75%の大きさだということです。TKLよりもさらにコンパクトになりますが、ファンクションキーの行はなくしていません。75%キーボードで有名なもののひとつはVortex Race 3です。

60%、65%……60%と65%のキーボードはほとんど同じで、英数字キーは全てありますがファンクションキーの行をなくしたモデルとなります。65%の場合は、方向キーやページナビゲーションキーがある場合が多いです。60%レイアウトで有名なキーボードはVortex Pok3rシリーズです。

40%……40%フォームファクターはとにかくサイズがコンパクトなことにこだわるハードコアなキーボードファン向けのものです。アルファベットキー以外はほとんどが取り除かれているといっていいでしょう。Vortex Coreが有名です。

キーボードのPCB

イメージクレジット……KBDFans
イメージクレジット……KBDFans

キーボードのケースを選んだら、次にPCBを選びましょう。ケースの形とPSBが適合しているかよく調べてから選ぶようにしましょう。また、PCBの中にはキースイッチを取り替えられる(ホットスワップできる)ものもあります。

ホットスワップ対応というのは、キースイッチをはんだ付けする必要がなく、差し込むだけで使えるということです。つまり、後からスイッチを付け替えたい場合に、はんだを溶かして引き抜いて……ということをしなくても簡単に取替えられるということです。しかし中にははんだ付けをした方が長持ちするという意見もあります。いずれにせよ、キースイッチを取り替えて遊びたい場合にはホットスワップ対応のPCBを選ぶといいでしょう。

また、RGBのLEDを搭載したPCBもあります。光らせて遊びたい人はこちらも検討しましょう。

自分に合ったスイッチを選ぶ

Cherry MX茶軸
Cherry MX茶軸

カスタムメカニカルキーボードのスイッチには、大きく分けて3つの種類があります。リニア、タクタイル、クリッキーです。

リニア……リニアスイッチは、キーを押した際に重さの変化がなくストレートに押せるスイッチです。有名なスイッチはCherry MXの黒軸や赤軸です。

タクタイル……タイピングの際にフィードバックがある方が好みという人はタクタイルがおすすめです。タクタイルスイッチはスイッチを底まで押し切る前に重くなる点があり、その点を通り過ぎるとまた軽くなるというものです。この結果、タイピング音が普通よりも少し大きくなります。タクタイルで有名なスイッチはCherry MXの茶軸です。

クリッキー……これはタクタイルに似ていますが、中でもタイピング時にクリック音が鳴るように作られているものを指します。これはタイプライターでの入力音を彷彿とさせるものです。もし、タイピング時に物理的にも音的にもフィードバックが欲しいなら、クリッキーが合っているかもしれません。Cherry MX青軸はクリッキーで最も有名なスイッチです。

キーキャップはどれを選ぶべき?

小さく、伝統的でないキーボードレイアウトの例
小さく、伝統的でないキーボードレイアウトの例

カスタムメカニカルキーボードを作る中で楽しいパートのひとつがキーキャップ選び。キーキャップはキーボードを眺めるときにいつも見る部分になるので、自分が好きなものを選ぶことが重要です。不幸なことに、キーボードケースと同様に、キーキャップの多くは時折行われるグループバイでしか手に入らず、一度逃すと二度と手に入らないケースもあります。

キーキャップには“プロファイル”があります。多くの場合、RazerやLogitechといった市販品のキーボードで使われているのは“OEM”や“Cherry”というプロファイルです。

他にもSAというタイプライタースタイルで高さのあるプロファイルや、比較的フラットなXDAというプロファイルがあります。どのプロファイルが良いかということはなく、あくまで自分にどれが合っているかという視点で選ぶのがいいでしょう。

スタビライザー

イメージクレジット……KBDFans
イメージクレジット……KBDFans

前述したように、スタビライザーは長いキーを安定に入力するためのものです。これは長いキーがあるキーボードにとっては不可欠な部品で、普通はそこで販売されているスタビライザーを選べばそれで十分です。しかし中にはより良いものを求めて他のブランド品を選ぶ人もいますが、初めてのメカニカルキーボード作りであればCherry製のスタビライザーを選んでおけば間違いはないでしょう。

スタビライザーを選ぶとき、プレートかもしくはPCBに取り付けられたスタビライザーが販売されていることに注意してください。プレートなしで作っているなら、後者を選択しましょう。

どこでこれらのパーツが買える?

カスタムメカニカルキーボードの問題は、やはり比較的ニッチな趣味だということです。Redditで見かけるようなファンシーなキーボードの多くはグループバイの形式で販売されています。つまり、販売者は先に期間を決めて注文を受け、その後工場にオーダーを出しています。

このようにニッチなホビーだと、キーボードやキーキャップのセットの在庫を販売者が抱えているのは難しいのです。中には在庫を持って販売している業者もありますが、数としては限られています。

チェックすべきベンダーは以下の通り:

KBDFans
MechanicalKeyboards.com
NovelKeys
Zeal
DailyClack

まとめ

初めてメカニカルキーボードを作ろうとすると、少し圧倒されてしまうかもしれません。このガイドが、そんなあなたの道しるべになれば幸いです。または、ほぼ組み上がっているメカニカルキーボードを購入し、パーツを入れ替えることでも始めることはできます。まずはキーキャップを買ってみるのが、カスタマイズの第一歩におすすめです。