世界初のブラックホールの写真が、世界の電波望遠鏡をつなぎ合わせた観測システム「イベント・ホライゾン・テレスコープ」(EHT)により撮影されました。これまで「ブラックホール」と紹介されてきた画像は人工的なCGであり、実際のブラックホールの影を写したのは今回が初めてです。
ブラックホールは光が逃げられないほど高密度で大きな重力を持った天体です。この「光が逃げられなくなる」境のことを「事象の地平線」(イベント・ホライゾン)といいます。光速で動く光すら逃さないため、あらゆる物質は事象の地平線を越えると再び外側へ戻ることはできなくなります。
この性質からブラックホール自体から光は放たれず、観測できないのですが、周囲のディスク状になった物質は熱く、光を放ちます。この光の中心にブラックホールがあるために、ブラックホールの部分だけ影として見えるということです。
今回の写真は、楕円銀河M87の中心にある超巨大ブラックホールの影を写しています。M87は地球から5500万光年離れた場所に位置し、観測したブラックホールの質量は太陽の65億倍だといいます。ブラックホールを観測したEHTは、世界中の8台の電波望遠鏡を束ねることで観測に成功しました。8台の協調動作により、仮想的に地球サイズの電波望遠鏡としてふるまえるということです。
「数年前、ブラックホールの観測にはとても大きな宇宙望遠鏡を建設しなければならないだろうとわれわれは考えていました。しかし、世界中の電波望遠鏡を1つの望遠鏡として協調動作させることで、EHTチームはこれを達成したのです」と、NASAの天文学部門ディレクターのPaul Hertz氏はいいます。
複数のNASAの宇宙船は、異なる波長の光を利用することでEHTの発見を大きく補佐したといいます。NASAの人工衛星ChandraとNuSTARからのデータを用い、天文学者がM87のジェットのX線の明るさを計測しました。
1つのブラックホールを見るために、地上や宇宙で多くの異なる望遠鏡を用いるのは大変な作業でしたが、最終的には偉業を成し遂げるに至ったということです。
この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。
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