Valveは、携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」のLCDモデルについて、生産を終了することを明らかにした。米国ではすでに256GB版の再入荷が停止され、公式ストア上にも「今後製造されない」旨の表記が追加されている。今後は在庫限りで販売終了となるが、既存ユーザーへのサポートは継続されるという。

Valveは生産終了の明確な理由を公表していないものの、業界ではRAMやストレージなど主要部品の価格高騰が背景にあると見られている。特に、399ドルという戦略的な低価格を維持することが、現在の市場環境では難しくなってきた可能性が高い。
Steam Deck LCDは2022年2月に発売され、手頃な価格と十分な性能を両立した製品として、PCゲームを“持ち運ぶ”という新たな選択肢を一般層に広めた存在だ。ASUS ROG AllyやLenovo Legion Goといった競合が登場する以前から、市場を切り拓いた功績は大きい。ブラックフライデーなどで最大20%オフのセールが行われていた点も、在庫整理を見据えた動きだった可能性がある。
現在、Valveは有機ELディスプレイを搭載した上位モデル「Steam Deck OLED」を主軸に据えているが、価格は549ドルと大幅に上昇している。これにより、低予算でPCゲームを楽しみたい層にとっては参入障壁が高くなったとも言える。
今回のLCDモデルの静かなフェードアウトは、Valveの今後のハードウェア戦略だけでなく、PC携帯ゲーム機市場全体の方向性を示唆している。性能重視・高価格化が進む中で、かつてのSteam Deck LCDが体現した“手の届くPCゲーミング”は、ひとつの時代を終えようとしている。入手を検討している場合、現行在庫が最後のチャンスになるかもしれない。























