重い荷物を持ち上げたり、曲げたりする作業は腰痛の原因として世界中で最も頻繁な職場障害の一つです。特に農作業では20〜30kgのバスケットを何十回も持ち運ぶなどの反復動作が多く、姿勢の管理が難しく、疲労や慢性的な痛み、職率低下を招くことが避けられません。
Withforce A10 の概要:軽量で強力な助力ベスト
•重量はわずか3.3kgでありながら、最大25kgの補助力を発揮し、生体力学的試験で 背部への負荷を最大35%軽減 することが確認されました。ジュジュ島(済州島)の農家での実地テストでも、繰り返しの持ち上げ作業を経て疲労が明らかに軽いと評価されています。
•補助機構には特許取得済の リニア・マッスル・アクチュエーター(LMA) を採用し、約200本の形状記憶合金(Shape-Memory Alloy=SMA)スプリングを束ねた構造です。モーター駆動型外骨格のような重量・硬さを伴わず、電気で通電して加熱することで収縮し、冷却で戻る性質を活かして繰り返しの動作に耐える設計となっています。
制御系とユーザー経験:AIで“いつ・どれだけ”を判断
•ベストのストラップ部には力覚抵抗センサー&モーションセンサーを組み込んでおり、作業者が前かがみに傾く動きや「今持ち上げようとしている動作」を検知します。
•AIモデルは100人以上の被験者データでトレーニングされており、姿勢/動作を推測してアクチュエーターを作動させるタイミングと補助力の大きさを制御します。
•腰を曲げずにひざを使って持ち上げる「スクワット型持ち上げ」を促す姿勢スコアリング機能もあり、ポストラルな安全性をガイドしつつ、動きの自由を損なわない設計です。
モーター式外骨格との比較と実用性
•モーター駆動型外骨格は能力が高い反面、重量・大きなバッテリー・騒音などが欠点となることが多い。
•一方、受動型の弾性バンド型支援器具は軽いが補助力や制御性に限界がある。
•Withforce A10 は SMA スプリングの反応速度・軽さ・柔軟性 を両立させており、「午後になると腰がもたない」ような疲労が蓄積する場面で効果が特に顕著。
バッテリー・耐久性・用途展開
•電源は 40V の Makita 製ツールバッテリー を使用し、約4時間の連続稼働が可能。バッテリー交換は数秒で行え、作業の中断を最小限にします。
•ベスト本体は IP42 の耐候性を持ち、屋外作業に耐えるモジュール構造と調整可能なストラップでフィット感も確保。スプリングの冷却用ファンも備えられています。
市場戦略とコスト・普及への課題
•Withforce Inc.は韓国発のスタートアップで、Hyundai Mobis のスピンオフ企業。設立は 2023年。チームには自動車・電子業界出身者が参画しています。
•まず農業を主対象とするものの、倉庫・物流・建設・軍事用途などへの応用も検討中。
•コスト面が普及の鍵であり、一台分の価格は「良い自転車」に例えられる水準。個人農家には手が届きにくいため、公的貸与やリースといったスキームを構築中。済州では地方自治体が貸出モデルをテスト中です。ドイツではレンタル事業者と提携を模索しています。
✅ 総括:Withforce A10 が重労働現場の体力と健康を支える
Withforce A10 は、その動作補助能力・軽量性・着用の快適さ・AI を活用した制御という側面で、多くの既存支援装置が持つ妥協点を克服しています。特に農業従事者や物流現場のように、繰り返す「持ち上げ」「曲げ」が日常となる現場では、腰痛リスクを可視化・軽減する“現場で着る補強具”として大きなインパクトを持つモデルです。