Intelのx86プロセッサを長年使用してきたAppleですが、ARMベースのチップセットに移行することに疑問を感じている人も少なくないはずです。その理由の一つとして、IntelのCPUは長らくサーバーやデスクトップ、ラップトップPCをはじめとしたコンピュータに重用されてきましたが、ARMはモバイル機器をメインに多く使われてきました。しかし、Appleと同様に新たな局面に差し掛かった幕開けともいえる存在が「富岳」です。

富岳は、理研と富士通が開発したスーパーコンピューターです。富士通製ARMチップセットを搭載、年2回公表されるスーパーコンピュータ速度ランキングTop500で1位を獲得しています。Top500 HPLベンチマークによると、富嶽は415.5ペタフロップスで、IBMのSummitの約2.8倍の速さを実現しています。

現在は主にCOVID-19、新型コロナウイルスの分析等の処理に使用されており、各種研究やウイルスのシミュレーション、追跡アプリの有効性の確認などに役立てている状況。本格的な稼働は来年からと見込まれています。

AppleはMacをARMベースに変更することで、それほど高い性能ではなくとも、SoC(System on Chip)をPCにも使用することで、熱設計に限界があるx86系CPUベースのPC設計に一石を投じる可能性があります。もちろん今回の富岳が高い性能を発揮したように、ARMが信じられないほど強力な性能を発揮する可能性を秘めていることにも疑いの余地はありません。

一方、コンシューマベースの企業であるAppleは、ユーザーにARMの価値を認識してもらうには、ユーザーが使い慣れたアプリのほとんどを、ARMベースでも高い互換性があることを担保しなければならず、ユーザーが走らせるプログラムをシステムに寄せるスパコンと違い、ちょっとした課題もあることでしょう。とはいえ、日本勢のARMスパコンが世界一を取った日に、期しくもAppleがARMアーキテクチャへの移行を発表。新しい時代の幕開けの日として記憶されるかもしれません。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

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