皆さんこんにちは。河上 純二 a.k.a JJです。

世界を変えるスタートアップ企業にフォーカスした最新レポートをお届けします。
今回で第11回目、みんなが思わず笑顔になる“しくみ”をデザインしてサービスを提供している「株式会社しくみデザイン」の中村俊介さんにお話を伺いました。


楽器を弾けない僕が、どうすれば気持ちよく音楽を奏でられるようになるか?を考えた結果生まれたのがKAGURA

僕はKAGURA(https://www.kagura.cc/jp/)って新世代の楽器を作っています。ただ「KAGURAってなに?」と直球で聞かれると、言葉だけで説明するのが難しくて。、ただ一言で説明するとKAGURAは「AR楽器」です。何かに触れたりすることなく、体を動かすだけで演奏ができる楽器です。

KAGURAを着想した2000年当時、僕は大学院で芸術工学を専攻していて、そこでメディア・アートの制作をしていました。ただその当時はメディア・アートって言葉はまだ定着していなくて、まだ「インスタレーション」などと呼ばれていた時代です。メディア・アートに取り組んでいるアーティストも、国内ではまだ数かなり限られていた時代でした。
僕は全く楽器を弾けなくて、それがずっとコンプレックスでした。楽器が弾ける人を見るととても羨ましくて。とはいえじゃあ頑張って楽器を練習して弾けるろうという気概があったかというと、そんなことはなかったんですけど(笑)

そこで僕みたいな人間でもすぐに演奏できて、しかも練習が必要ない楽器を探したのですが、やっぱりなかった。そこで考えて「よし!自分で作るか!」と制作したのがKAGURAです。
KAGURAの仕組みはとてもシンプルで、ウェブカメラから送られてくる映像から体の動きを感知して、その動きが音として生成されるというものです。発表当時はこれを「楽器」と言っていいのかは正直悩んでいました。いまよりもずっとアートに近いものでしたから。

そんなスタートから15年くらい経ったここ5年くらいでようやく色々な人に理解してもらえるようになってきたと実感できるようになりました。これは環境の変化、そしてテクノロジーの進化によるところが大きいですね。


熱意を持って続けることで、いつか風向きは変わる

福岡県のヤングベンチャー支援事業から補助金を得て、「しくみデザイン」としてビジネスをスタートしたのは2005年。もう15年前のことです。このころはもちろんスマートフォンもなかったし、PCに標準でウェブカメラがついていることなんてこともありませんでした。

またソフトウェアを売ることにも大きなハードルがあった時代です。当時はまだPCのソフトウェアってお店でパッケージを売ることがまだ主流で、ニッチなソフトウェアのマネタイズには厳しい時代でした。KAGURAをオンラインで販売しようと考えてもみたのですが、クレジットカード使うなんて怖くて危ない!と思われていました。だからまわりの人からは、「え? これどうやって売るの!?」と言われ続けたものです(笑)

そんな状況でKAGURAを一旦封印したような感じでインタラクティブサイネージなどでビジネスを続けていたのですが、2013年にIntel社がRealSenseカメラを立ち上げるにあたって、RealSenseを活用したアプリケーションのコンテストを開催したんです。。そこで10年前に作ったKAGURAを、今の技術と新しいスタッフで作り直してみようと決心し、コンテストに向けてさらにブラッシュアップを加えて応募しました。

そしてその結果はグランプリ受賞。世界中から注目をしてもらえるようになりました。! その手応えから「今ならこれ、いけるぞ!」と奮起し、獲得した賞金も開発費に全て充て、もう一回KAGURAを広げていく活動をスタートさせました。


KAGURAをきっかけに新しい文化を作りたい

これまではパフォーマンスツールとしてプロの期待に応えられるものを目指して開発を続け、プロミュージッシャンに使ってもらおうとサポートを続けていたのですが、最近新たなユーザーへのアプローチが必要だと思うようになりました。それが教育分野です。
プロに限らずミュージシャンを目指している人ってKAGURAでなくても、他のツールや楽器を使ったパフォーマンスがすでにできるわけです。もちろんそういうミュージシャンたちのクリエイティビティをKAGURAは拡張できるのですが、そもそもKAGURAは楽器の演奏ができない人でも気持ちよく音楽を奏でられるツールを目指しています。つまり既存の楽器にとらわれず、初めての楽器としてKAGURAに出会って、KAGURAならではのパフォーマンスに取り組んでくれるような人に触ってみてほしいし、それがユーザーを広げることにつながっていくと感じています。
KAGURAを普通に使うパフォーマーを増やすことが大事だと考えると、すぐに結果は出にくいけど、教育に力を入れたほうが最終的に近道かなと。最近では学校の先生と一緒にプロジェクトを進めるようになったこともあり、ミュージシャンだけでなく教育関係者からの問い合わせが非常に増えてきています。

また僕らはSpringin’(スプリンギン)というiOSアプリも開発しています。これは自分が作りたい作品やアプリをiPadで楽しくプログラミングできるツールです。プログラミングといってもコーディングは必要なくて、最近は小学校でのプログラミング教育にも取り入れられるようになってきています。
一見全く違うツールのように見えますが、実はSpringin’もKAGURAもコンセプトは一緒なんです。つまり「積み重ねをしなくても、アイデアを簡単に作品として創ることができる」ツールです。

自分がずっとクリエイターとしてやってきてたどり着いた事実としてあるのが「一番楽しいのはクリエイト(創ること)そのもの」ということ。すごいテクノロジーに触れたり、他の人が作ったすごいもので遊んだりすることより、自分で作れるようになることが一番楽しいんですよ。
僕らはこのことをもっと広めたいと思っています。そしてその方法論としていま力を入れているのが教育です。テクノロジーとデザインの力でいろんなことの敷居を低くすること、そしてそれによって人々がもっとクリエイティブになることが僕らのこれからの活動コンセプトで、僕らは「クリエイターをクリエイトする」クリエイターを目指しています。




「始めることの敷居を下げて、作ることが楽しくなるまでの時間を最短にする」ことを実現するのがテクノロジー
株式会社 しくみデザイン
代表取締役 中村 俊介

https://www.shikumi.co.jp/



■河上 純二 a.k.a JJプロフィール

ビジネスプロデューサー/パーソナリティ/モデレータ
河上 純二 a.k.a JJ
Facebook:https://www.facebook.com/junjikawakami
WEB:https://jylink.jp/kawakami/
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCi4qhCZWA5I0jSxnseIQ_7A/