Huaweiはパリで、新型スマートフォンHuawei P30とP30 Proを発表しました。発表にはメディアなどが3000人以上集まったといいます。この記事では発表された2モデルについて実機を触りながら比較していきます。肝心のカメラ性能については、詳しくは別途レビューする予定です。
まずは簡単なスペック比較をしてみましょう。
名前だけで見れば大きな違いはないものかと思ってしまいますが、このように比べると各数値が異なっていることが分かります。P30 Proは技術的により秀でた機種であり、P30は昨年のP20 Proをメインストリームの価格まで下げてきたモデルだといえます。
この戦略は、サムスンのGalaxy S10シリーズとは大きく異なっています。こちらではS10eがモデルベースとなり、S10、S10+、S10 5Gの派生モデルが作られています。どこが違うのかはスペックを並べてみればすぐに分かる程度のものです。
P30とP30 Pro、共通の特徴は?
・Full HD+(2340×1080ピクセル)
・Kirin 980プロセッサー
・3200万画素、F2.0のセルフィーカメラ
・Wi-Fi ACとBluetooth 5.0に対応
プロセッサーに搭載するKirin 980は、これまでのMate 20 Proにも搭載されてきたものです。Mate 20 Proでもみたように、Kirin 980はハイエンドのVRゲームも快適に動かせる性能を持ちます。
FHD+のディスプレイは有機ELで、これについてはおそらく議論があるものと思いますが、2018年のiPhoneシリーズが有機ELを採用したことから製造単価が下がったために、コスト面では合理性があるものといえます。
Huaweiとしては、例えば今回のToF(Time of Flight)カメラセンサーなどカメラハードウェアにコストを掛けなければいけないことから、相対的にディスプレイ解像度についてはトーンダウンせざるを得ません。
新しい3200万画素のセルフィーカメラはとてもパワフルですが、Mate 20 Proに搭載していた3Dフェイスアンロック機能はなくなってしまいました。代わりに涙滴型の前面デザインとなっており、デュアルカメラでのボケ生成機能もなくなっています。
2機種のカメラの違いは?
HuaweiのPシリーズは代々Leicaによるデザインであり、先進的なカメラ性能を毎回叩き出しています。Mate 20 Proのカメラも素晴らしいものでした。今回もそれは変わらず、さらにはいくつかの「初」機能すら搭載しています。
「スーパースペクトラムカメラセンサー」って何?
Huaweiのいう「スーパースペクトラム」カメラセンサーとは、1/1.7インチサイズの4000万画素クアッドベイヤーセンサーのことです。サイズこそP20シリーズと同様ではありますが、その配列は大きく異なります。従来のベイヤー配列がRGB(赤緑青)のカラーフィルターだったのに対し、P30シリーズではRYB(赤黄青)のカラーフィルターを採用しています。
あまり大きな変化には、一見して見えないかもしれません。しかし黄色というのはより広い色スペクトラムであり、黄色を採用することで同じセンサーサイズでもより光をセンシングできるということです。このような理由からニコンも90年代に、CYGM(シアン黄色緑マゼンタ)のカラーフィルターセンサーを採用していたことがありました。今回のRYB配列はこれとはまた別の技術ではありますが、発想の根底は同じところにあります。
CYGMセンサーはその後普及しませんでしたが、HuaweiのRYBという新コンセプトは緑を黄色に変えるというアイデアに新たな息吹を吹き込みそうです。理論的には、ダイナミックレンジがより広くなります(特にHuaweiの場合は黄色フィルターの画素でも高感度と低感度センサーを分けています)。これが、「スーパースペクトラム」センサーの内容です。
低照度下での写真については、なんと最高ISO感度409,600をうたっています。P20 ProやMate 20 ProでもISO102.400を誇っていましたが、さらにその上を行きます。一般的にISO感度が高いほど「ゲイン」が高くノイズが多くなるのですが、新センサーにはノイズを低減するさまざまな技術が用いられているといいます。
信じられない望遠端125mmズーム
Ubergizmo(アメリカ版)ではHuaweiの80mmズームが最高だとしてきましたが、それも今日までのようです。P30 Proでは125mmまで光学ズームが可能だとしています。
私達としては、「5X」という表記よりも125mmという焦点距離を使うことをおすすめします。P30 Proは実際のところ、広角端が16mm、望遠端が125mmなので倍率としては7.8Xなのですが、同社は先代機と表記を一貫したいという理由から5Xを利用しているようです。
光学ズームについて加えると、同社はハイブリッドズームという名前で、画質劣化なしに270mmまでズームできるとしています。この技術には写真を複数撮影して手ブレ補正などをかけるプロセッシングも含まれています。
ユニークな屈折光学系のレンズデザインのため、さらには驚くほど長い焦点距離もあり、絞り値はF3.4と明るい環境下に適したものになっています。多くのスマートフォンカメラでは低照度環境下でプライマリーレンズ(25~27mm)に戻ることから、これは新しいことではないのですが、指摘しておく価値はあるでしょう。
10Xのハイブリッドズームは動画撮影中にも利用できます。ズーム機能は野生動物やコンサートといった被写体が遠くにあるときに被写体に寄れるのが大きなメリットです。
AISというのはAIによる手ブレ補正のこと
人工知能(AI)イメージスタビライゼーションは、連写合成と、画像中央のクロップによる電子手ブレ補正といった技術の合わせ技です。
これまでもHuaweiのスマートフォンにはナイトモードやウルトラクラリティ(Honorシリーズ)といった機能が搭載されており、同社は複数の画像合成技術を改善してきています。
例えば、「スーパーポートレート」モードではぶれるほど動いた髪など望ましくないアーティファクトを写真から除去することができます。このときソフトウェアはイメージセグメンテーションという、同じ場所で動く物体を検出して修正するAI技術を利用しています。同社のイメージセグメンテーションはHonor 10で初めて搭載された機能でした。
ToFセンサーで次世代のボケ生成が可能に
被写界深度エフェクトを作るために、ピント以外のボケた位置を推定する方法はいくつかあります。ToFカメラの場合、赤外線を照射して返ってきた情報から深度情報を生成するため、よく使われるデュアルカメラによるボケ生成よりも精度が良いといいます。
結果として、ボケ効果はよりナチュラルな感じになります。高精度のボケを作れるようになることで、これまでデュアルカメラによるボケでできていたような物体の縁にできてしまうアーティファクトもなくなることが期待できます。現在のスマホでは、P30 Proの他にLG G8とGalaxy S10 5GがToFセンサーを搭載しています。
3200万画素セルフィーカメラ
同社はこれまでも優秀なセルフィーカメラを搭載してきており、今回は3200万画素と画素数を向上させました。デュアルカメラやToFのようなボケ用センサーはありません。実際の画質については検証してみなければならないでしょう。
P30シリーズのソフトウェア
P30シリーズのソフトウェア面は、Mate 20 Proから進化した点がいくつかあります。
まず、EMUI 9.0になりHuawei OneHopが利用できるようになります。これは同社のノートPCであるMatebookとつないでPCからスマホを操作できる機能です。これは大変快適な体験ではありますが、もちろんスマホとPCのどちらもHuawei製の必要があります。同社はOneHopを他のWindows PCやMacでも利用できるように開発を進めているようですが、数ヶ月ほど遅れているようです。
次に、同社はEROFSという新しいファイルシステムを導入しました。なにか、文字列的にはちょっとエッチな感じもしますがそういうことは関係なく、新ファイルシステムにすることでアプリの起動速度が20%向上し、利用中のパフォーマンスもより快適になると同社は説明しています。これは「ステイファスト」(速いまま)、つまり古くなったスマホの速度低下を起こさせないようにする同社の取り組みの一部でもあります。
最後に、P30シリーズは車の鍵としても使えるといいます。まずはアウディの鍵として利用できるそうです。車用の鍵として策定しているNFCの標準規格を用いているので、今後会場できる車のモデルは増えていくとしています。
車の鍵機能が過去のHuaweiスマホに配信されるのかどうかは分かりませんが、技術的な障害はないように思えます。
まとめ
新しいP30とP30 Proはそれぞれ個性を持ったアツいスマホです。P30 Proは紛れもなく多くのイノベーションと強力なカメラ性能を詰め込んだヘビーヒッターで、P30はP20 Proを普及価格帯にしながらP30 Proのソフトウェアの一部も搭載するモデルということです。
カメラについても今後レビューしていくので、「チャンネルはそのまま」でお願いしますね。
この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。
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